2013 Fiscal Year Research-status Report
金属凝集性の量子化学的定量評価に基づく電極触媒の経時劣化因子の解明
Project/Area Number |
25820002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 愛 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (40463781)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 凝集性 / d軌道 / 3d, 4d, 5d / 自己拡散 / 触媒設計 / 耐久性 / 金属内部結合エネルギー / 量子化学計算 |
Research Abstract |
これまで、燃料電池および自動車用触媒などの様々な触媒について、特定した元素の性質に限定した理論研究を行ってきたが、実用触媒は、複数成分から成る合金や酸化物様々な元素が配合されて用いられる為、遷移金属全般に亘る普遍的な量子化学的性質の解釈が望まれている。しかし、様々な元素種を扱うほど、その混合物の中でどの成分が触媒性能に寄与し耐久性を支えているのか、という判断が難しくなってくる。3d, 4d, 5d遷移金属全ての凝集性に関する実験データ、理論計算データを統合して把握する事で、触媒開発時の指針に役立つ情報が一度に公開できる可能性がある。そこで、量子化学的性質を得る事に加え、既往の金属の凝集性に関する実験的研究成果と照合してみると、3d,4d,5d元素種の凝集性に関する諸物性について、共通した凝集性に関する量子化学的性質が見出された。3d, 4d, 5d遷移金属の金属間結合エネルギーを調べ、金属間結合エネルギーを算出したところ、d電子占有順に大きくなり、d電子が半分占有された元素で最大になり、d電子が全く占有されていないか、もしくは、全て占有された元素で最小になる事がわかった。この性質は3d, 4d, 5d遷移金属全般に通用する性質であった。なお、この性質は、自己拡散係数、凝集エネルギー、融点、拡散が開始するTamman温度に共通していた。なお、これほど基礎的で、且つ、実用触媒の性能の良し悪しの左右を決定できるデータであるにも関らず、既往の研究においても、3d、4d、5d占有軌道数の周期性と関連づけた量子化学的な見解として捉えられた事は無かった。 金属の凝集性に関る諸物性が互いに相似の関係にあり、その事を包括的に報告した例は存在せず、目下、電池・触媒における専門家から意見を募り論文化を進めている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[H25年度の計画]金属種の拡散特性を定式化し凝集諸特性の周期性の有無を量子化学的に解明する. 従来より拡散に関る諸因子には凝集エネルギー、拡散開始温度Tamman温度があるが、それらとの相関も調べ、金属元素固有の凝集性を定量評価する。予定した本計画に沿って、下記を明らかにする事ができた。 (1) 3d、4d、5d元素種の凝集性に関する諸物性を幅広く調査したところ、Mnなど、d軌道電子が半分占有されたポイントで対称的な凝集諸特性が見られたが、理由が掴めないでいた時に、3d金属の元素種 Mnにおいては、Jahn-Teller effectがある可能性を考慮しバルク金属の結合(この場合はMn-Mn金属結合)を確認すると良い、との意見を学会参加時にセラミクス専門の教授から頂くことができた。この3d、4d、5d元素種の平均結合距離とJahn-Teller effectとの関連性を解明していきたい。 (2) 3d、4d、5d元素種の凝集性に関する諸物性の中で、どの元素においても一番データが不足している物性は自己拡散に関する物性であった。この自己拡散係数のデータであるが、バルク中のものなのか表面のものなのか決着が付かないでいた所、電気化学の専門家である教授からバルク金属中のデータではないか、と示唆を頂けた。もし表面のデータであるならば、実験データが欠落している箇所について計算により理論的に拡散係数を導出する試みが可能であるが、その時切り出す表面によって拡散係数が変わってきてしまう為、普遍性に欠く事になる危険性が出てくる。しかし、バルク中であるならば、切り出す表面に関らず元素ごとの比較が可能になる為、より一般性のあるデータが取得できると予測している。
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Strategy for Future Research Activity |
3d、4d、5d元素種の凝集性に関する諸物性の中で、どの元素においても一番データが不足している物性は自己拡散に関する物性であった。金属バルク結晶中の原子の拡散係数を計算で出す事にも挑戦し、理論計算によって、nmスケール領域で金属の拡散係数を算出し、 ばらつきのある実験値を補完したい。これを基にアレニウス式D=D0exp(-E/RT)に従って有限温度下で触媒微粒子の実時間に沿った移動量を求める事で劣化予測が可能な3次元キネティックモンテカルロ法にマルチスケールに繋ぎ、拡散現象を軽い計算負荷で、高速な定量予測を行う。
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Research Products
(14 results)