2013 Fiscal Year Research-status Report
近接場光を利用した局所領域におけるレーザ超音波計測
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25820005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
松谷 巌 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (00514465)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近接場光 / エバネッセント光 / レーザ超音波 / アブレーション / プラズマ / 閉じ込め効果 |
Research Abstract |
レーザ超音波計測は、レーザ光を用いて材料の内部や表面に高周波弾性波を励起し、それをレーザ干渉計等により検出することによって、材料の機械的特性評価や温度分布計測、損傷診断および構造ヘルスモニタリング等を可能にする優れた手法である。しかしながら、照射レーザのスポット径は光波の回折限界によって物理的に制限されるため、光の波長以下の極小領域での超音波の発生が実現できていないのが課題である。そこで我々は、近接場光を利用した極小領域における超音波の発生について検討している。本年度は、近接場光によるレーザ超音波計測実現の前段階として、プリズム界面での全反射によるエバネッセント光を利用してアルミニウム試料に超音波の励起を試み、超音波の発生についての実行可能性を評価した。最初に、エバネッセント光を利用した超音波の励起の可否を確認した。次に、超音波探触子を移動させて、発生した超音波の指向性(角度依存性)を調査することによって、発生した超音波の性質を評価した。 エバネッセント光によって励起した超音波は、第1-第2エコー間の時間差が0.96 μsであった。これは、アルミニウム縦波音速の文献値と試料の厚さを考慮すると妥当な値であり、エバネッセント光による超音波の励起が確認できた。超音波の指向性の調査の結果、今回の実験で得られた超音波は、0°の指向性を有することから、アブレーションによるものであることが判明した。急減衰する微弱な光を用いての超音波励起は、発生した超音波の強度が不十分となることも懸念されたが、今回のプリズム-試料間は密着した閉じた系を形成しており、プラズマの発生によって十分な強度の超音波が生成できることを確認できた。したがって、今後先鋭な光ファイバの先端に発生する近接場光等を利用すれば、平面方向において光の回折限界以下の極小領域にも超音波励起が可能になる可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、プリズムでの全反射(クレッチマン配置)を利用したエバネッセント光による超音波励起と計測システムの構築に取り組んだ。そして、当初の目標であった超音波励起の確認ができたため、おおむね順調に推進できたと考えられる。超音波発生用レーザとして、パルスレーザ(Nd:YAG, 1064nm, 200mJ)を使用し、弾性波の検出部については、フォトリフラクティブ二光波混合法を用いたレーザ干渉計(Nd:YAG, CW, 532nm, 200mW)を使用した。また、レーザ干渉計から得られる超音波波形を収録し、フィルタ処理やFFT等の各種解析、赤外線カメラの画像解析や熱電対からのデータ同期を可能とするLabVIEW計測システムを構築した。本計測システムによって、超音波の励起と計測、超音波の指向性を調査することができる。得られた超音波強度が毎回異なってしまうという難局に遭遇したが、プリズムと試料の表面粗さやうねりを計測した所、エバネッセント光の到達距離以上のうねりが存在したため、光がサンプルに届いていない可能性が考えられた。この問題に対して、プリズム-試料間の押しつけ力を付加したところ、力に比例した超音波強度が得られたため、これ以降の実験では、与圧をかけて実験することによって問題を解決した。また、プリズム-試料間に与圧をかけたときを熱力学的な閉じた系とし、与圧無しの場合を開放形として、レーザによるプラズマの衝撃圧力を理論計算したところ、閉じた系を形成すると開放系よりもはるかに衝撃圧力が高くなることが確認できた。当初懸念されたことは、急減衰する微弱な光を用いての超音波励起は、強度が不十分となる可能性があることであったが、この問題は解決可能であることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度推進した研究では、Z方向に光強度が減衰する系であるプリズム表面のエバネッセント光を利用したため、レーザ超音波計測において問題となっている、XY方向の空間分解能の向上を計れたわけではない。しかしながら今後、先鋭な光ファイバの先端に発生する近接場光等を利用すれば、XY方向において光の回折限界以下の極小領域にもレーザ超音波計測を適用できるようになる可能性があると考えられる。また、光ファイバ導波だけでなく、平面基板に作成した微小開口マスクや回折格子利用した近接場光についても検討する。その際に、今年度得られた、閉じた系を形成することでレーザアブレーションによる超音波強度の増強が計れるという知見を生かして、新規計測システムを構築する。レーザ照射により弾性波が発生する機構としては、熱弾性効果や圧電効果、電歪効果、光励起電荷によるものが考えられる。被測定対象物の材料物性や形状に応じて、弾性波の波動方程式が異なり、弾性波の発生条件や各モード(縦波、横波、レイリー波・表面波)によって伝搬特性が異なるため、弾性波の特性を理論と実験の両面から調査する。この際、測定対象を半導体材料だけではなく、極細線材料や薄膜、生体材料への適用の可否についてもあわせて検討する。また、測定対象物の形状の影響(平面、曲面、細線)、対象物の表面性状の影響についても調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
誤差の範囲で微小な残額が発生した。 電子部品購入費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(26 results)