2013 Fiscal Year Research-status Report
超小型Mg合金単結晶疲労試験による疲労特性の微視構造依存性の解明
Project/Area Number |
25820006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
柿内 利文 岐阜大学, 工学部, 助教 (20452039)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疲労 / マイクロマテリアル |
Research Abstract |
超小型のマグネシウム(Mg)合金試験片を用いた疲労試験システムを作製し,安定的に疲労試験を実施する環境を得た.また,疲労試験前の材料に電子線後方散乱回折(EBSD)法による結晶方位解析を行い,その材料の特定位置から試験片を採取することで,結晶方位の明らかな疲労試験片を作製する技術を確立した.材料には市販のAZ61を用いた.疲労試験片は集束イオンビーム(FIB)加工を用いて作製した.試験片形状は,一辺が約5μmの長方形断面を有する長さ40μmの超小型片持ち梁(マイクロカンチレバー)形状とした.試験片のハンドリングを容易にするために,約2cm四方の直方体のバルクブロックの辺上にマイクロカンチレバーを作製し,試験片の固定および位置調整はブロックごと行った.マイクロカンチレバーへの荷重負荷は,ピエゾアクチュエータに取り付けた先端直径約5μmのガラスプローブを介して行った.試験のセッティングおよび試験時には,上方に設置したマイクロスコープを用いて観察を行った.この観察により試験片の変形量も測定した.平滑試験片は根本部で破断を生じるが,FIBによる試験片作製の原理上,根本部の加工精度は十分とはいえず,推定応力が妥当でない可能性がある.そこで,長手方向中央部に切欠きをつけることで正確な応力推定を行った.また,納入材の平均結晶粒径が約30μmであるのに対して,マイクロカンチレバーはFIB加工や観察精度の都合から長さを40μmとしたため,必ずしも1結晶粒中からの採取ができない可能性があった.そこで,強加工後に熱処理を施すことで結晶粒を最大1000μm程度まで粗大化させた材料を作製し,この材料を用いることで特定の結晶粒中からの確実な試験片採取を可能とした.以上のように,超小型試験片の試験システムの作製および周辺技術を確立に成功し,実際に疲労試験を行うことで微小試験片の疲労強度特性を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度中の実施計画として,当初の予定では,以下の3項目を挙げていた.(1) FIB加工による超小型疲労試験片の作製技術の確立.(2) EBSD,EPMA,AFMを用いた微視構造の分析技術の確立.(3) 超小型試験片用の疲労試験装置の作製/疲労試験手法の確立.計画当初は,対象とする微視構造として,結晶粒と介在物を想定し,EBSDの他にも電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)や原子間力顕微鏡(AFM)も用いる予定であったが,EPMA,AFMはほとんど利用しなかった.これは,Mg合金が強い異方性を持つという特性を持つため,結晶方位に着目した研究を行うことがより有意義であると考えたためである.この点以外は,上記の【研究実績の概要】に述べたように,計画はおおむね達成できた.さらに,次年度(平成26年度)に実施予定であった疲労試験も,予備試験の範囲を超えて一通りのデータ取得を終えることができた.以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の【現在までの達成度】において述べたように,ここまでの研究は順調に推移している.前述した(1)~(3)に引き続き,申請時に当初の予定で掲げた平成26年度の計画は,以下に挙げる(4)~(6)の3項目である.(4) 超小型試験片による疲労試験の実施.(5) 微視構造状態ごとの疲労特性の把握および比較・検討.(6) 微視構造が疲労挙動に及ぼす影響の評価・まとめ. Mg合金は稠密六方(hcp)構造という特殊な結晶構造を持つため,すべりや双晶系の数が少なく,特定面のすべりやすさを表す指標であるシュミット因子の差が大きい.また,それぞれに固有な臨界せん断応力の差も大きく,すべり系/双晶系の作動が理論的に予測しやすい.これまでの研究によって,疲労試験を行うシステム及び結晶方位を解析した試料から試験片を作製する技術などを確立した.このシステムによって実施した疲労試験によって,微小材料では疲労強度に個体差が大きい傾向が得られた.本年度は,さらにこの傾向を確かめ,個体差と結晶方位解析から予測される強度との比較を詳細に行うことで,結晶方位に着目した強度基準を確立することを目指す.さらに,結晶粒界における方位差なども考慮し,微視構造の強度とバルク材の強度との違いについても考察する.
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Research Products
(2 results)