2013 Fiscal Year Research-status Report
非線形電気弾性理論によるフレキシブル有機トランジスタのマルチフィジックス解析
Project/Area Number |
25820010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
森本 卓也 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30451660)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 曲げ変形 / 積層構造 / 有機トランジスタ |
Research Abstract |
フレキシブル有機トランジスタ(OFET)の積層構造が曲げ変形を受ける際に生じるひずみについて,初等的な多層はりの曲げ問題と平面ひずみ問題を組み合わせることで導出した.このひずみによって生じる OFET の構造変化に伴う曲げ変形前後でのキャパシタンスと電界効果移動度の変化率を求めた.微小ひずみで典型的なポアソン比の値をとる場合には,ポアソン効果として知られている既往の知見が近似解として得られることを確認した.また,電界効果移動度に及ぼすひずみの影響は,積層構造の長さスケールにもとづいた理論解析では捉えられないことが明らかとなり,有機半導体層における変形に伴う結晶構造の変化を考慮したマルチスケールモデリングの必要性を示唆した.さらに,OFETが曲げ変形を受けて電気的特性が失われる限界曲げ半径の理論的予測に対して,曲げ変形の不均一性(局所化)の影響を検討するために不均一な有限曲げ変形の理論解析を行ったが,微小ひずみ領域ではその影響は現れなかった.ただし,やわらかいエラストマの誘電層が用いられた OFET の構造では電極の界面で生じるひずみを低減できることがわかった.限界曲げ半径は,最近報告されている実験結果にもとづくと2%程度のひずみに達すると電極の界面でき裂を生じていることに起因しているものと考えられることから,デバイスの積層構造にやわらかい材料の層を介することで,き裂の発生と進展を低減できる可能性を示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,(1) フレキシブル有機トランジスタ(OFET)が曲げ変形を受けても電気的特性を損なわず使用可能である限界の曲げ半径の予測可能な平面ひずみモデルの構築,ならびに (2) 曲げ変形下での電界効果移動度を評価するための基礎理論の構築を目指したものである.(1) について,OFET に生じる変形場を理論解析によって評価できるようになった.一方,限界曲げ半径はひずみの局所化によって決定されるものではなく,電極層と誘電層の界面でき裂が発生することに起因していることが明らかとなった.この点については,有限要素解析で明らかにする必要があり,当該年度の研究計画で実施できなかった事項である.次年度の研究計画である (2) の一部について,先に繰り上げて理論解析を実施した.そして,電界効果移動度に及ぼすひずみの影響は,積層構造の長さスケールにもとづいた理論解析による構造因子の変化だけでは捉えられないことが明らかとなり,曲げ変形に伴って有機半導体層内で生じる結晶構造の変化を考慮したマルチスケールモデリングの必要性を示唆した.以上のように,当該年度の研究項目は概ね達成できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から,限界曲げ半径はひずみの局所化によるものではなく,電極層と誘電層の界面でき裂が発生することに起因していることが明らかとなった.すなわち,曲げ変形を受ける OFET において,電極のエッジでのエネルギー開放率の最大値が界面はく離強度よりも低ければ,き裂は成長しない.また,エラストマを誘電層に利用したデバイスの構造では,き裂の発生を低減できることが明らかとなった.これらの点について,有限要素解析によって検証する.さらに,曲げ変形に伴って有機半導体層内で生じる結晶構造の変化が移動度に及ぼす影響についての現象論的なモデル化を行い,電界効果移動度のひずみ依存性を定式化する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していたシミュレーションを次年度に繰り越し,理論解析を先に実施するように変更するようにしたこと,および成果発表のための国際会議への出席が他の用務のために取りやめとなったため. シミュレーションの結果を可視化するための計算量が想定していたよりも大きいため,大規模可視化のためのワークステーションを導入する.また,最終年度であることから成果発表にかかる費用を計上する.
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