2014 Fiscal Year Research-status Report
スーパーコンピュータと風洞をリアルタイムでつないだ最適計測の実証実験
Project/Area Number |
25820039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三坂 孝志 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (20645139)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | データ同化 / 数値流体力学 / 感度解析 / 計測最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
データ同化法は,数値シミュレーションの不確定要因(モデル誤差,初期・境界条件)を観測値に基づき修正する方法であり,気象など自然現象のシミュレーションに有効である.本研究では運航安全に関係する乱気流の予測のようにリアルタイム性を要するデータ同化問題において,限られた観測(計測)点を有効に配置する手法を確立するために,スーパーコンピューターによる大規模高速流体解析と風洞実験を高速ネットワークでリアルタイム接続したデータ同化システムを構築し,リアルタイム最適計測の実現可能性を調べる実証実験を行うことを目的としている.
平成26年度は東北大学流体科学研究所の低乱熱伝達風洞を用いたデータ同化に基づくリアルタイム最適計測システム(適応型計測システム)の実証実験を行った.実証実験においては供試模型を比較的単純な形状の球および立方体とし,それらの後流をトラバース装置によって支持されたピトー管で計測することとした.ピトー管による計測データの処理とスーパーコンピューターとの通信処理を一括して扱うためにLabviewによるデータ処理システムを構築した.低乱熱伝達風洞とスーパーコンピューター間の通信は40Gbps/sの速度で行うことができるが,今回の実証実験ではデータ通信量は小さかった.基本的なアプローチとしては,模型後流を等間隔で計測してデータ同化を行い,次に計測感度が高い領域で空間解像度を上げて追加の計測を行う.最適計測における計測位置の決定は,風洞実験と平行して数値流体解析において,計測値を同化したときの流れ場の感度を計算することによって行った.適応型計測システムとして完全自動で動作するものを構築することができたが,リアルタイム性に関しては数値流体解析に用いるBuilding-Cube Method(BCM)コードの計算コストに依存する形となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は風洞とスーパーコンピューター間のデータ送受信テストを行い,流れ解析および縮約モデルに基づく感度解析コードの開発を行った.その後,低乱熱伝達風洞においてリアルタイム最適計測の実証実験まで行うことができた.また,可視化システムに関して,リアルタイムではないが実験を撮影した動画に数値流体解析結果を重畳表示するAR(Augmented Reality)システムを導入した.実証実験を通して,データ同化およびリアルタイム性に関する課題を抽出することができた.上記より,本研究課題における主要目的を達成することができたといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の実証実験で得られた知見に基づき,適応型計測システムの改善を行う.検討項目としては,BCM流体解析コードの高速化,データ同化の問題設定の検討,風速の非定常成分の計測などが挙げられる.BCMコードの高速化に関しては,MPI並列計算における動的負荷分散を検討する.データ同化は気象予測において初期・境界条件の推定に用いられるが,一般的な工学問題においてはデータ同化の問題設定は自明ではない.本研究のように風洞流れ場にデータ同化を適用する場合は,初期・境界条件は大きな不確定要素とはならない場合が多く,モデルパラメータ等の修正が有望である.定常流れ場においては乱流モデルのパラメータ推定が考えられるが,非定常流れを扱う本研究課題においては計測値殿差に基づく格子細分化の可能性を検討している.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことにより発生したものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,平成27年度請求額とあわせ,平成27年度の研究遂行に使用する予定である.
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Research Products
(16 results)