2013 Fiscal Year Research-status Report
熱音響エンジンにおける進行波型自励振動の発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
25820044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 大 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40448048)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱音響自励振動 / 熱音響エンジン / 臨界条件 / 境界層理論 / 進行波 / ループ管 / スタック / 熱交換器 |
Research Abstract |
実用化が期待されるループ管型の熱音響エンジンにおいて,進行波を含む熱音響自励振動が発生するメカニズムを明らかにするため,これまで重要視されてこなかった管内に挿入されるスタックの空隙率や壁厚に着目し,数値シミュレーションを実施した.数値シミュレーションは,境界層理論に基づいて準一次元に帰着させた方程式を熱交換器やスタックが管内に挿入された各種不連続量を伴うループ管に応用することにより実施した.従来,熱交換器とスタックは,急峻な温度勾配の形成と温度勾配下での濡れぶち長さを局所的に増大させることにより臨界温度比を低く抑える目的で管内に挿入されてきたが,伝熱促進以外の影響については余り議論されてこなかった. 本研究により,先ず,熱交換器およびスタックの挿入に起因する局所的な空隙率の低下と,定在波・進行波を問わない自励振動そのものの発生を決定付ける臨界温度比との関係が明らかになった.既存の実験結果との比較も含め,その詳細をまとめた学術論文が平成25年度末に出版された.これにより,臨界曲線の特定には,これまで慣習的に用いられてきたパラメータである水力半径に対する境界層の代表厚さの比であるいわゆるωτだけでなく,スタックの空隙率や壁厚が重要であることが明らかになった.また,いかなる空隙率や壁厚のスタックにおいても,高温側の熱交換器後方のいわゆるバッファチューブにおける温度勾配を緩やかにすることにより,臨界温度比を低く抑えられることも分かった. また,先行実験との比較から,我々の準一次元モデルの適用範囲が非常に広く,上述のωτが2付近まで有効であることが分かり,複雑な細管理論を使わずとも,各臨界曲線における最低温度比付近まで境界層理論が有効であることが示された意義は非常に大きい.これにより,引き続き研究を進める進行波の発生メカニズムの解明に我々の準一次元モデルが有効であることが十分期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進行波の発生メカニズムを解明するにあたり,平成25年度の計画は,先ず,簡易的に各種不連続量を取り込んだ境界層理論に基づく線形化モデルを用いて数値シミュレーションを実施し,定在波・進行波を問わない自励振動そのものの発生を決定付ける臨界条件を数値的に示すことであり,実際,この目標を十分に達成した内容を含む学術論文を年度末までに出版するに至った.また,他研究機関における先行実験の結果との比較についても,良い一致を示すことが確認され,今回用いた簡易モデルの有用性についても上記論文中にて確認された.また,我々の準一次元モデルの適用範囲が非常に広く,いわゆるωτが2付近まで有効であることが実験との比較から分かり,複雑な細管理論を使わずとも,各臨界曲線における最低温度付近まで境界層理論が有効であることが明らかになった.これに加え,これまで行われてきたいわゆる固有値問題として臨界条件を求めるのではなく,初期値問題を解くことで臨界条件を求めたことにより,臨界振動に至る過渡振動についてもその振る舞いが明らかになってきた.これらの結果は,国際学会にて発表し,講演論文として出版された. また,この過程において,スタックの空隙率だけでなく,スタックの壁厚や積層枚数によって,臨界振動に含まれる進行波成分に大きな差異が生じ,進行波の発生を促進するスタックの形状に特定の傾向があることが分かってきた.これにより,非線形性とは無関係に,線形振動である臨界振動においてもスタックの形状によって,含まれる進行波成分が異なることが分かってきた.この詳細について,定量的な議論を含め,引き続き研究を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究結果を踏まえ,先ず,進行波発生に至る過渡振動と定在波発生に至る過渡振動の違いを明らかにし,進行波発生に有利なスタックの形状を空隙率や壁厚や積層枚数などこれまで重要視されて来なかった観点から明らかにする.特に,これまで重要視されてきたωτが同じ値であっても空隙率が異なれば臨界振動に含まれる進行波成分が異なることが分かってきたことは非常に興味深い.それらの詳細を学術論文としてまとめ,熱音響エンジンの重要な構成要素であるスタックの新たな設計指針を提供する.その上で,境界層理論に基づく我々のモデルを非線形に拡張することで,非線形性により飽和した自励振動においても進行波成分を含む自励振動がループ管で発生することを数値的に示し,その発生メカニズムを解明する. しかしながら,境界層理論を応用した本モデルの場合,各種不連続量を含んだ方程式の接続条件は複雑になることが容易に予想され,非線形効果も含んだ接続条件は数値的な不安定をもたらし,飽和に至るまでの過渡振動のシミュレーションは困難なものになる可能性が高い.実際に数値不安定が回避できない場合は,人工的な数値粘性などの導入ではなく,数値的に安定な代替の接続条件を再度検討し,実験結果との比較により妥当性を評価する.また,比較に際し,非線形振動の特性等,先行する実験結果だけでは不足する情報がある場合は実験を行うことも検討する.なお,本研究の成果を実験に容易に取り入れることを可能にするため,数値計算上の無次元パラメータ等は,可能な限り各有次元量に落とし込んで情報発信をする様に工夫する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進める上で,必要に応じて研究費を執行したため. 上記理由により当初見込み額と執行額はわずかに異なったが,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め当初の予定通り計画を進めていく.
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