2014 Fiscal Year Research-status Report
壁面の粘弾性を組み込んだ声道の集中系モデル化手法の開発及び医療技術への応用
Project/Area Number |
25820075
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木庭 洋介 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (20380602)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 機械力学 / 集中系モデル / 人工喉頭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は集中系モデルを用いた声道(音響空間)と声帯振動の連成解析を行う第一段階として,笛式人工喉頭を対象に音響-振動連成解析を行った.笛式人工喉頭とは喉頭を摘出した患者の代替声帯として使用されるもので,声帯振動を模擬したブザー音を発生するゴム製の弁と気管孔と口腔内を繋げるゴム製のチューブ(音響空間)から構成される.気管孔からの呼気により弁を振動させることにより音源を生成し,これをチューブにより口腔内に誘導することにより発声する.解析結果と実験結果を比較するにあたり,生体を対象とした場合では声帯の振動計測や物性値の特定が困難であるため,声帯振動と同様に自励振動を発生させ音源を生成する笛式人工喉頭を本年度の研究対象とした. 音響空間はチューブ内部を1次元音響管として軸方向に要素分割し,分割点に要素内の空気から求めた質量を集中させ,その質点間は線形ばねおよび減衰要素で結合した集中系でモデル化した.ばね定数は要素内の空気を断熱過程と仮定して導き,減衰係数は軸方向に垂直な断面に働く粘性による法線応力から導いた.弁は質点,線形ばね,減衰要素でモデル化し弁前後の圧力差を外力として運動方程式を立てた.ベルヌーイの定理から弁前後の圧力差,弁の変位,弁の隙間を通る空気の流速変動量の関係を導き,弁の隙間を通過する空気の流速を弁に隣接する音響空間要素の速度条件として与えることで音響-振動連成解析を行った. 以上によりモデル化した系の安定性判別に固有値解析を行った結果,実験と同様に自励振動を起こすことを示した.この成果を日本機械学会九州学生会第46回卒業研究発表講演会にて発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集中系モデルを用いた声道と声帯振動の連成解析は,音響領域と声帯の振動を同時に解析することができ,偏微分方程式である流体の基礎式と振動体の運動方程式を交互に解析する手法と比べ取り扱いを容易にすることができた. 本年度の対象は喉頭摘出者の代替声帯として使用される笛式人工喉頭であるが,生体の声帯と同じく自励振動により音源を生成するものであり,本年度の結果を声帯へ適用することは困難ではない. 医療技術への応用を考えた場合,本解析モデルを用いて声道形状および音声波形から声帯モデルのパラメータ(質量,ばね,減衰係数)を同定することができる.同定結果が正常範囲(過去の文献による測定値から標準的な値は入手可能である)から逸脱したときに,喉頭癌や声門閉鎖不全の可能性を示唆するといった簡易的な診断手法としての応用が考えられる.この検討は本年度実施できなかったが,今後実施していく予定である. 以上により本年度の評価をおおむね順調であると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
声道は硬口蓋,軟口蓋,舌,口唇など粘弾性の異なる部位が存在する.この声道を縦続音響管でモデル化する場合,管円周方向に壁面粘弾性が異なるモデル化手法を開発することで精度が向上すると考えられる.そのため,前年度までの一次元縦続音響管モデルを拡張し,声道を軸対称円筒座標系でモデル化する手法を開発する. 声道を複数の要素に分割し,各要素の長さおよび体積の等しい音響管を縦続接続したもので近似する.さらに各音響管を円周方向に要素分割することで二次元縦続音響管モデルを構築する.各要素を質量,ばね,減衰要素で結合した集中系で表し,固有値解析および音波の伝搬の様子を解析する.このとき,音響管壁面の粘弾性はばね,減衰要素として扱う. まずは複数の粘弾性をもつシリコーンを使って作成した,円周方向に粘弾性の異なる音響管を対象とする.音響管の一端から加振器により音響加振し,他端でその音圧信号を取得して管内の音響特性を測定する.この結果と,2次元従属音響管モデルで解析した結果の比較を行い,従来の一次元従属音響管モデルに対する優位性について検討する. また,音響管の断面形状データと音響特性からガウスニュートン法などを用いて,モデルの各要素の粘弾性パラメータを同定する手法の開発を試みる.
|
Research Products
(1 results)