2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25820092
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
小崎 美勇 東京電機大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80550590)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面プラズモンポラリトン / 計測 |
Research Abstract |
本研究では白色光で励起した表面プラズモンポラリトン(SPP)を用いて,簡便に利用できる流体センサや流れの解析方法の研究を行っている.これまでに,今回の研究で試験的に測定対象とする水とエタノールの判別を行い,銀薄膜がそれぞれの流体に接している時のSPP励起特性を調査した.その結果,文献値による計算と若干の差異がみられたものの,その量は本原理による測定を妨げるほどではなかった.その差異の原因は,計算による推定により,銀の屈折率が文献値と異なるためであることがわかった.この銀成膜の光学的特性の違いは不純物が混入したためで,成膜装置の到達真空度やチャンバー内の清浄度の影響と考えている.作成した実験用光学系では,SPPを励起するための白色光は平行であるとことがもっとも好ましい.現在,ハロゲンランプからの放射光を絞りによって直径1mm程度の点光源とし,その点光源からの光を平凸レンズで平行光としている.絞りのサイズが小さければ完全な平行光に近くなり測定精度が上がるが,光量が減るので計測結果のS/N比が低下するなどする.その傾向の調査は今後の課題である.また,銀薄膜表面を粗面化することでSPPの輻射を試み,その色で流体の種別や濃度の判別を目指している.薬品を用いてガラス表面を粗面化し,その上に銀薄膜をスパッタリングすることで粗い表面の銀薄膜を得ることに成功している.エッチング時間によってSPPの励起特性が変化することが確認できている.銀表面の粗さによってSPPの励起特性が変化することは過去の文献と一致するので,エッチング時間と粗さには相関があると考えて実験を進めている.分光器を用いた実験を行った結果,測定サンプル毎にSPP励起波長の違いがみられたが,粗さが大きくなると感度とSPP励起効率の悪化が,粗さが小さすぎると輻射効率の低下がみられた.今後,最適粗さを探索する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SPPを励起してその特性を評価するには,まず,安定して銀薄膜を作製できるようにならなくてはならない.すでに,スパッタリングによって銀を成膜したあと,自動回転ステージ,レーザ光原,光検出器,自動計測制御コンピュータ等を用いて,ある程度は再現性良く銀薄膜を作成できているので,実験を進めることができる.ただし,最適な成膜条件が少しずつシフトする,基板の汚れに起因するとみられる成膜不良など,不安定な要素も残している.白色光によるSPP励起光学系はほぼ完成しており,肉眼での直接観察を確実に行える段階には至っていないものの,分光器による計測の結果より,その見通しは立っている.少なくとも,屈折率差が十分ある場合,特に問題なく液体の判別ができるものと考えている.そのための光学系(白色光原,絞り,レンズ,白色光観察のために入射角度を最適化したプリズム,流路)は作製済みである.銀薄膜の粗面化については,薬品によるエッチングで進めており,そのエッチング時間の制御で粗さの調整が可能である目途が付いているが,再現性の確保や輻射量や輻射方向の制御に関しては不十分であり,リソグラフィによる微細構造の作製などの検討を進める必要がある.分光器による実験ではSPPの波長特性を確認できている.その感度は白色光の平行度に関連しているので,今後の評価の対象になるが,作製した光学系では絞りによって白色光の平行度を調節できるようにしてある.
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Strategy for Future Research Activity |
本手法の実現可能性を示すために,原理確認の実験を行い,流路内の流体の屈折率がSPPの波長に反映されることを視認できるようにする.安定して質の良い銀薄膜を得るために,成膜前に超音波洗浄と乾燥のプロセスを追加し,ガラス基板の清浄度を上げる.適切な粗さの銀表面を得るために,エッチング液による処理時間や方法の検討,別種のエッチング液の検討を進める.処理方法や条件を変えながら,SPP輻射実験を繰り返し,最適な条件を探索する.SPPの輻射と視認の目途が立ち次第,試験的にエタノールと水の判別実験を行う.またそれらを混合した場合の実験も行う.銀の粗さと感度や輻射光量の関係を明らかにするために,様々な条件での実験を試みる.銀の粗さを正確に制御するためには,ガラス表面に塗布した感光性樹脂にレーザ光で微細構造を作ることも試みる.すでに,光学系を作製中である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では,SPP輻射のための微細構造による銀薄膜の粗さをより正確な制御を行うための準備を,本年度中に始める予定であったが,その一部が次年度にずれ込んだためである.これは,前段階の薬品によるエッチングが良い傾向を見せていたため,これを継続して実験を行い条件の探索を試みていたからである.また,銀薄膜の成膜プロセスにおいて,基板や成膜雰囲気の清浄度に起因するとみられる銀薄膜の白濁や黒化が発生したことも,研究の次ステップへの移行を躊躇させる原因ともなった.なぜなら,新たにガラス基板に感光性樹脂を塗布するなどの,正常な成膜を阻害するかもしれないプロセスが追加されるからである. 当初予定していたリソグラフィに微細構造の作製のためにも使用するが,問題となっている銀薄膜の成膜の問題を解決するために基板洗浄のための装置類,成膜装置の一部改造や設置環境の改善にも予算を使用する.また,薬品によるエッチングはリソグラフィによる方法よりも簡便であるため,この薬品を用いた方法の改善にも使用したいと考えている.
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