2014 Fiscal Year Research-status Report
低損失モータ用鉄心の応力ベクトル磁気特性制御のための誘導加熱処理技術の開発
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25820105
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
甲斐 祐一郎 大分大学, 工学部, 助教 (50595436)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モータ鉄心 / 誘導加熱 / 応力 / ベクトル磁気特性 / 渦電流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,モータ鉄心の応力ベクトル磁気特性制御を目指した新しい誘導加熱処理技術開発することを目的とし,今年度は,昨年設計した誘導加熱コイルの作製と誘導処理効果について検討を行った。 今年度の研究では,①昨年度設計した誘導加熱コイルを作製,②無方向性電磁鋼板の誘導加熱処理,③簡易ベクトル磁気特性測定装置を用いた電磁鋼板のベクトル磁気特性測定を行った。①は,設計した誘導加熱コイルについてメーカと打合わせを行い,既存の誘導加熱電源とマッチングがとれた加熱コイルを作製することができた。②は,電源に誘導加熱コイルを取り付け,温度や時間などを変化させることによって電磁鋼板に誘導加熱処理を施すことができた。③は,誘導加熱処理効果の有無を確認するため,簡易ベクトル磁気特性測定装置を用いて交番および回転磁束下におけるベクトル磁気特性測定を行った。この結果,誘導加熱処理後の電磁鋼板では,磁界強度ベクトルの大きさや方向が異なっており,誘導加熱処理によって電磁鋼板に新たな誘導磁気異方性を生じさせることができた。 これまでの研究によって,応力を印加することによって電磁鋼板のベクトル磁気特性を制御できる知見が得られており,さらに,鉄損が減少する最適な応力条件があることを報告してきた。本研究課題では,モータ鉄心の応力ベクトル磁気特性制御を目指し,誘導加熱処理技術に着目し,具体的な応力印加法に関する研究課題に取り組んでいる。 実際のモータ鉄心では,様々な位置に交番や回転磁束が発生する。今回の研究課題に取り組むことによって,モータ鉄心に最適な局所応力印加・緩和技術が開発できれば,交番や回転磁束下における磁気損失を低減することが可能であり,高効率・低損失機器開発に貢献することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題であった加熱コイルの作製を行い,電磁鋼板に誘導加熱処理を施しその効果の有無を検討した。特に,誘導加熱処理を施した電磁鋼板のベクトル磁気特性を測定し,誘導加熱処理によって無方向性電磁鋼板に新しい誘導磁気異方性が発生し,再現性もあることを確認した。昨年度は,誘導加熱のコイル作製が思うように進まず,研究目的に対して遅れがあったが,今年度は,その遅れを取り戻すことができた。さらに,これまでの応力ベクトル磁気特性測定によって得られた結果と,誘導加熱処理した無方向性電磁鋼板の磁気特性が類似しており応力効果が得られた可能性がある。今後も引き続き,誘導加熱処理による磁気特性の変化が応力効果によるものかを確認するために,残留応力測定やメカニズムを解明する必要がある。「研究の目的」の達成度と比較すると,今後取り組む課題についても明確になっていることから,研究もおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,これまでの研究成果である応力ベクトル磁気特性測定によって得られた結果を踏まえ,誘導加熱処理した無方向性電磁鋼板の磁気特性が応力効果によるものかを詳細に検討するため,誘導加熱処理した無方向性電磁鋼板の残留応力分布測定を行う。また,誘導加熱の加熱条件(加熱時間,加熱温度,加熱領域)を変化させ,磁気損失が低減する最適条件を模索する必要がある。さらに,誘導加熱による応力発生メカニズムを解明へ向けて,渦電流による電磁力と熱応力を考慮した磁界解析を行い,電磁鋼板内の応力分布について詳細な検討を行う。 今年度(平成26年度分)の研究成果については,未発表であるため,最終年度は,学会等へ出席し,その報告を行う。
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