2013 Fiscal Year Research-status Report
カルド樹脂を絶縁膜に用いた有機TFTの高性能化とフレキシブルディスプレイへの展開
Project/Area Number |
25820119
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
奥 慎也 山形大学, 理工学研究科, 助教 (80625525)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 有機トランジスタ / カルド / ディスプレイ / 絶縁膜 / 高分子 / 有機EL |
Research Abstract |
本研究において、平成25年度はアクリレートモノマーを付与した光硬化性をもつ新規カルド樹脂を開発し、薄膜における物性評価と有機薄膜トランジスタ(TFT)の基礎評価、及び、小規模パターンの有機ELディスプレイの駆動発光に成功した。 膜厚480 nmのカルド樹脂薄膜においてAFMによる表面観察を行ったところ、優れた表面平坦性(RMS<0.3 nm)を示し、ピンホール等の欠陥は無かった。絶縁破壊試験ではPMMA等の一般的な高分子樹脂より比較的高い絶縁耐性(>4 MV/cm)を得た。また、誘電特性では、100~1MHzの周波数域で比誘電率は4.0とほぼ一定となり、誘電分散は観察されず安定した特性を示した。 次にカルド樹脂膜をゲート絶縁膜に用いたボトムゲート/ボトムコンタクト型有機TFTを作製した。ソース・ドレイン電極はフォトリソグラフィーを用いて短チャネル(L=5 μm)とし、有機半導体はペンタセンを用いた。作製した有機TFTより、キャリア移動度は0.15 cm^2/Vs、電流オンオフ比は10^7以上が得られ、電流ヒステリシスのない良好なトランジスタ性能を得た。また、長時間駆動後の閾値電圧の変動はわずか0.8 Vと良好な駆動安定性を示した。同様の有機TFTをプラスチックフィルム上に集積してバックプレーンを構成し、小規模パターン(16×16画素)の有機ELディスプレイを試作した。有機ELの発光層は緑の蛍光材料であるAlq3を用いた。画素密度100 ppiのパターンにおいて有機EL(単色)の駆動発光に成功した。 以上の結果は、カルド樹脂膜が高い平坦性と絶縁性を示すほか、複雑なデバイス作製プロセスにも耐性を有し、有機TFTの塗布型ゲート絶縁膜材料として有望であることが結論づけられる。これは、将来の低コスト・大面積エレクトロニクスを実現するための電気電子材料として重要な成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造の異なるいくつかの新規カルド樹脂を開発し、基礎物性、有機TFT作製・評価について当初の計画通りに遂行している。カルド樹脂の硬化における条件出しも並行して行い、有機TFTのゲート絶縁膜として用いる際の最適条件を確立しつつある。カルド樹脂をゲート絶縁膜、有機半導体にペンタセンを用いた短チャネル有機TFT(単体)において、移動度0.1 cm^2/Vs以上、電流オンオフ比10^7以上の良好な性能と、長時間のバイアスストレスにおける駆動安定性が達成されたことから、翌年度に計画していた有機TFTバックプレーンへの応用にも先行して着手できた。小規模パターン(16×16画素)の有機ELディスプレイにおいては、画素密度100 ppiの駆動発光に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、引き続き新規カルド樹脂の開発と有機TFTの作製・評価を行いつつ、フレキシブル有機ELディスプレイへの展開を図る。特にカルド樹脂が有機TFT作製プロセスについても優れた耐性を持つため、塗布型の有機半導体、及び、電極材料を用いたオール塗布プロセスの有機TFTについて作製と評価を行う。また、カルド樹脂の成膜手法に関して、印刷法などのスピンコート法以外の塗布プロセスによる成膜手法を検討する。フレキシブル有機ELディスプレイは画素数を増やし、静止画や動画が表示可能なものを目指す。このほか、ゲート絶縁膜以外でのカルド樹脂の有用性も探索する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、設備備品費に計上していた装置一式について、本学内で所有する同様の装置を借用可能となったため、購入をとりやめた。また、学会等の旅費についても、他予算からの支出が可能となった。そのため、当初の見込み額と執行額が異なり平成25年度の研究費に未使用額が生じたが、研究計画に変更はなく、平成26年度に行う予定の研究計画と併せて実施する。 UVランプの照度、及び、紫外線波長によってカルド樹脂の光硬化性に大きく影響することが判明しており、本学所有のUV照射装置では対応が困難であった。そこで、光量の調節が容易、かつ、照度分布が少なく均一にUV光を照射できるUV照射装置を購入する必要があり、新たに設備備品費として計上する。また、有機薄膜トランジスタ用の測定治具、フレキシブル有機ELディスプレイ開発に必要なフォトマスク等の物品を購入する予定であり、これらは本研究の遂行に支障が生じないよう、本年度のなるべく早期に導入する予定である。このほか、研究を進めていく上で必要な試薬、有機溶媒等の消耗品や学会発表等の出張経費として必要に応じて適切に研究費を執行する。
|
Research Products
(6 results)