2013 Fiscal Year Research-status Report
(Sr,Ca)-La-Co系フェライト磁石の粒子界面分析による保磁力特性の解明
Project/Area Number |
25820126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小原 学 明治大学, 理工学部, 講師 (20343618)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Ca-La-COフェライト / フェライト磁石 / 保磁力 |
Research Abstract |
本研究はCa-La-Co系フェライト焼結磁石において,特に焼結体の粒子界面の組成分析を行い,粒子界面の状態と保磁力特性を結びつけて議論を行うことにより,保磁力特性向上のための新たな指針を得ることが目的である。1年目の2013年度の研究成果について以下にまとめる。 基本組成式をCa0.5+αLa0.5Co0.4Fe11.6Oβとし,Caの過剰量αを0,0.03,0.05,0.1,0.15,0.2と変化させて試料を作製した。これらの反応焼成後粉末の粉末X線回折より,α=0では不純物相としてヘマタイトが検出されたが,α=0.03以上の試料ではマグネトプラムバイト(M)型相単相が得られた。次にこれら試料を用い,焼結温度を1160~1240℃と変化させて異方性焼結磁石を作製した。各試料のX線回折の結果より,α=0.05以下の試料では不純物としてヘマタイトが検出され混相試料となった。α=0.1,0.15,0.2の試料は,どの焼成温度においてもM型相単相が得られた。この結果より,本実験において解析対象とする試料を,α=0.1,0.15,0.2とすることを決定した。 上記のように決定した3試料において,走査型プローブ顕微鏡(SPM)観察により平均粒子径を求め,ほぼ粒子径の等しい焼結体をそれそれ選び出し,それら試料表面の組成マッピング測定を行った。なお,測定にはEPMAを用いた。その結果,Caはαの値が増加するに従って全体的な濃度が増加するとともに,偏析が起こることがわかった。また,Laについてもαの増加とともに偏析が起こることがわかった。マッピングデータより偏析が起こっている領域が全体にしめる割合を算出し,保磁力との関係を評価したところ,Laの偏析領域が増加するに従って保磁力が直線的に増加する傾向が見られた。来年度以降,途中添加物の影響も踏まえさらに詳細な議論を展開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画段階において,粒界組成分析の方法はEDSにより行う予定であり,実際でも当初はEDSにて実験を進めていた。しかし,EDSでは空間的な分解能が足りないことがわかり,途中よりEPMAによる分析に変更した。これが研究進度に遅れが生じた原因のひとつである。また,過去の研究より,Ca-La-Co系フェライト焼結磁石において,Laの析出は起こらないといわれていた。そのため基本組成式においても,Caのみが過剰となる量としてαを定義した。しかし,実際ではLaの偏析が発生した。これは作製段階において混合粉砕が十分ではなかったことなどが原因ではないかと考えられる。このLaの偏析が保磁力に大きな影響を与えている結果が得られており,偏析が起こった原因を明確にする必要があると思われる。 また,磁気力顕微鏡(MFM)を導入し磁区模様の観察を行ったが,正しい磁区模様の観察が行えていない。得られた画像データに関するソフト的な加工処理方法の確立が必要であると考えており,これも研究進度に遅れが生じている原因のひとつである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の大きな変更は必要ないと考えられる。ただし,次の3点について特に対策を講じ,研究を遂行する。 「1.Laの偏析について」 Laの偏析がおこらない試料の作製が必要であると考える。計画当初では遊星ボールミルを用いて試料を作製する予定であったが,予算の都合上セラミックボールミルと振動ミルを用いて作製した。これを見直し,試料作製段階において遊星ボールミルを用いた混合粉砕をおこなうか,あるいは反応焼成後粉末を微粉砕した後に再び反応焼成を行うことで,Laの析出を抑えた試料の作製を行う。「2.粒子界面の組成分析方法について」EPMAでは,偏析物の解析は可能であるが,粒子界面そのものの組成分析は難しい。このため,TEMを用いたEDSによって粒子界面の組成分析を試みる。ただし,現在の研究環境では設備が存在していないため,測定試料を慎重に厳選し,分析を外部業者に依頼する。「3.磁気力顕微鏡による磁区模様観察について」磁気力顕微鏡による観察は,その構造上,試料の表面からわずかではあるが離れた位置での磁気力測定となる。そのため,試料表面に現れている磁区模様を描くためには,得られた磁気力模様から表面の磁区模様を導く処理が必要となる。そこで,二次微分による変曲点の算出と,それらを細線化する画像処理を施すことにより,磁区模様を求める。 以上の注意点を考慮しながら,化学量論組成に対するCaの過剰量αだけでなく,焼結助剤として用いられているCaO及びSiO2途中添加が粒子界面の組成及び磁気特性に与える影響について議論を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画当初は遊星ボールミル用ジリコニアポットを購入する予定であったが,EPMAによる測定の業務委託費がかさんだことなどにより,購入は断念した。また,次年度においても業務委託費が必要であることも考慮した。そのために次年度使用額が生じた。 酸化鉄等の材料費及びEPMA及びTEM観察のための費用として使用予定である。
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Research Products
(2 results)