2014 Fiscal Year Research-status Report
(Sr,Ca)-La-Co系フェライト磁石の粒子界面分析による保磁力特性の解明
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25820126
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小原 学 明治大学, 理工学部, 講師 (20343618)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Ca-La-Coフェライト / 保磁力 / フェライト磁石 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究において,基本組成式をCa0.5+αLa0.5Co0.4Fe11.6Oβとして,Ca過剰量αを変化させて試料を作製し,平均粒子径が同等の試料を選定してEPMAにより組成マッピング分析を行った結果,過剰量の増加と共にCaとLaの析出量が増大する傾向が確認された。これはαの値により,結晶中にLaが含まれる量が変化していることが考えられる。そこで2014年度においては,組成式を(Ca0.5La0.5)1+αCo0.4Fe11.6Oβとして,過剰量αにLaの量も連動することとし,同様の実験を行った。その結果,過剰量αの増加に伴い,Caの析出量は増加する傾向が見られたが,Laの過剰量はαが増加するに従って,いったん増加した後減少する傾向が見られた。これは,CaとLaの析出割合は線形的ではないことを示唆している。また,保磁力特性については,Ca析出量が増加するにしたがって保磁力も増加する傾向が見られた。これに対してLaの析出量が増加した場合,保磁力はいったん増加した後減少する傾向が確認された。 また,Laの析出を極力抑制するために,作製方法改良の検討も行った。これまで微粉砕の工程において,振動ミルを用いて8時間の湿式粉砕を行っていた。しかし,この方法ではLaの析出が見られ,また粉砕後スラリー試料の平均粒子径にバラツキが見られることから,よりバラツキが少なく,且つ,粒子の微細化が行われ,さらにマグネトプラムバイト型結晶構造の分解が起こらない方法として,ジルコニアボールを用いた長時間ボールミリングによる微粉砕を行った。これにより,Laの析出を抑制しつつ,より均一で微細な焼結体作製用スラリーを作製することに成功した。しかし,ジルコニアボールを用いて微粉砕を行った場合,焼結体試料においてM型単相を得るために必要なCaの過剰量が増加する傾向が見られた。また,振動ミルを用いて微粉砕を行った場合に比べて,低温の焼成温度で緻密化が進みやすくなる傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画段階において,粒界組成分析はEDSを用いて行う予定であったが,空間的な分解能不足により,EPMAによる観察に切り替えた。EPMAは当研究機関は所持していない装置のため,外部の装置を借りる必要があり,これにより研究の遅れが生じた。また,Laの析出は発生しないことを想定していたが,Laの析出が発生していることが確認された。そこで2014年度の研究において,Laの析出が発生しない作製方法を検討する必要が生じた。ジルコニアボールを用いた長時間のボールミリングにより微粉砕を行う方法を検討し,Laの析出を極力抑えた焼結体の作製に成功はしたものの,本件が研究進度の遅れを生じた一番の要因であった。また,Laの析出が発生したとしても結晶構造中のLa量にほとんど変化を生じさせない様な組成式による検討も行った。以上の要因により,現在研究目的に対する達成度は1年程度の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,当所の研究計画に対して,進行度は60%程度であると考えている。研究計画の大きな変更は無いが,以下の課題をクリアする必要があり,2015年度の研究において計画の一部微変更を行い取り組む予定である。 <課題>①Laの析出を極力抑えた焼結体を作製する必要がある。また,Laの析出があったとしても,結晶構造中のLa量が変化していない試料の作製が必要である。②ある程度の緻密化が行われ且つ単磁区を有するであろう粒子径の小さな焼結体を作製する必要がある。③磁気力顕微鏡を用いた磁区模様観察において,明瞭な磁区模様を得るための方法を検討する必要がある。 これら課題に対して以下のような計画の微変更を行う。(a)当初の計画において,微粉砕は遊星ボールミル又は振動ミルを用いる予定であった。これをジルコニアボールを用いた長時間ボールミリングに変更する。(b)焼結助剤であるCaCO2及びSiO2を途中添加した焼結体の作製において,Caの過剰量と途中添加物の添加量について当所の計画よりも若干範囲を広げ,焼結温度を調整することにより,単磁区である程度の緻密化が進んだ焼結体の作製を行う。(c)磁気力顕微鏡を用いた磁区模様観察において,画像処理による磁区模様の明瞭化を検討する。
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Causes of Carryover |
計画段階において,遊星ボールミル用ジルコニアポットを購入する予定であったが,EPMAによる分析依頼業務委託費がかさんだため,購入を断念した。また,試料作製方法の検討などを行ったためEPMAによる測定回数が増加し委託費も増加する可能性があった。しかし,種々の努力によりEPMA測定の業務委託費を極力押さえることに成功した。次年度において,TEM観察のための業務委託費が必要となる可能性も考慮した。これら理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
材料購入費及びEPMA又はTEM観察のための費用として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)