2014 Fiscal Year Research-status Report
単電子効果起因エラー耐性を有する極微細NANDフラッシュメモリシステムの構築
Project/Area Number |
25820148
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宮地 幸祐 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (80635467)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ランダムテレグラフノイズ / NANDフラッシュメモリ / 離散不純物ばらつき / 酸化膜トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、極微細NANDフラッシュメモリのランダムテレグラフノイズ(RTN)によるしきい値電圧の変動分布(以下強度分布とする)を、平成25年度に構築した三次元デバイスシミュレーション環境を用いて解析した。これはRTNのエラーモデルを物理的要因から構築するためである。これまでの既存研究によると、NANDフラッシュメモリのRTN強度分布は指数分布を示すという報告があるが、それがチャネル中の離散不純物のランダムな個数や位置に起因するものと考えられていた。しかし、不純物濃度に着目して単一トラップを考慮してRTN強度分布を調べたところ、NANDフラッシュメモリに使われるチャネル不純物濃度では分布の裾が広がらず、これまでの報告と比べて分布を過小評価してしまうことがわかった。これは、不純物濃度が薄いために不純物の個数や位置ばらつきが顕著にならないことが要因であるということが分かった。そこで、セルのデータパターンやトラップの個数がRTN強度分布に与える影響について調べたところ、消去状態の方がRTN強度の分布が広くなることと、トラップ個数が増えることで報告例に近い分布となることが分かり、これらはRTNの強度分布に大きな影響を与えていることが新たに明らかとなった。これは消去状態と書き込み状態でのチャネル電流分布が制御ゲートとチャネル間のフリンジ容量により大きく異なることや、トラップ個数、位置ばらつきがさらに加わることが原因であることが分かった。このようにNANDフラッシュメモリのRTN強度分布の要因が従来考えられていたものより複雑であることと、三次元シミュレーションによる計算量の大きさから、当初予定していたエラーモデルを構築するまでのデータが足りていない状況にあるが、これまでのNANDフラッシュメモリのRTN解析より精緻な議論と新しい発見により、学術的成果は得られていると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では平成26年度にエラーモデルの構築からエラー抑制システムの構築開始までを予定していたが、NANDフラッシュメモリのRTN強度分布の要因が従来考えられていたものより複雑であることと、三次元シミュレーションによる計算時間が平成25年度に利用を開始したスーパーコンピュータを用いてもなお長いことから、当初予定していたエラーモデルを構築するまでのデータが足りない状況にあり、計画に対して遅れていると考えている。RTNに影響を与えそうなパラメータが次々と見つかり増えていくため、その絞り込みを行ってはいるが、特に影響の大きそうな隣接セルデータパターンは考慮する必要があると考えている。しかし、隣接データパターンの違いを考慮した計算量はこれまでより大幅に増え、シミュレーションの収束率も上げる必要がある。また、これまで候補になかった仕事関数ばらつきの影響を考慮する必要性も出てきているが、現状のデバイスシミュレーションモデルでは対応できない可能性があり、この検討も時間を要している。なお、エラー抑制システムの評価環境は既に立ち上がっているが、エラーモデルとエラー抑制手法の確立がボトルネックとなっている。このような状況ではあるが、NANDフラッシュメモリのRTNの解析をミクロなデバイス物理の視点で系統的に行った例はなく、それ故既存報告例からさらに進んだ解釈を提供できているという点で学術的貢献は業績からもなされていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はRTNエラーモデルの構築を目標とすることに変更する。そのために隣接セルのデータパターンを含めたRTN強度分布傾向については調査し、そしてエラーモデルの構築に移ることとする。その後の残りの時間でできるだけエラー抑制手法の可能性を探っていけるようにする。エラーモデルを構築する際は書き換え回数とRTN強度の関係を今回は実測を通して知ることが出来ないため、トラップ密度などで代用して考える予定である。また、三次元デバイスシミュレーションでは計算量の関係上静的な電子のトラップ・デトラップによるしきい値電圧変化量しか追うことができないが、実際にはトラップ・デトラップの時定数もばらつくため、動的特性変動については検討の対象から外すことにする。ただ、静的なしきい値電圧変動の方が分布の広がりを過大評価する傾向にあるため、過小評価にはならないと考えている。
|