2014 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー局在現象の制御とナノテクノロジーへの応用
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25820164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 真之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00551376)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非線形理論・回路 / エネルギー局在現象 / 結合振動子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,エネルギー局在現象(空間局在モード)の制御を目指したものである.平成26年度は,パラメトリック励振による空間局在モードの不安定化について,さらに数値的に詳しく検討するとともに,空間局在モードの生成についても数値的,実験的に検討を行った.さらに,ナノ系における炭素単原子鎖に着目し,幾何的に同等な数理モデルを用いて空間局在モードの存在や安定性について検討を行った.主な成果について以下に述べる. 1. 空間局在モードの生成について 電磁機械系を改良し,加振力にホワイトノイズを重畳できるようにした.実験は,まずノイズのない状態で空間局在モードを励起し,加振力にノイズを加えた後,空間局在モードの挙動を観察した.結果,空間局在モードの移動や消滅が見られ,ノイズにより空間局在モードが不安定化することが実験的に確かめられた.また,空間局在モードが励起されていない状態においてノイズを加えた場合,極めて限定的な条件ながら,空間局在モードが生成されることを実験的に確かめた. 2. 準1次元FPU格子における空間局在モードの存在と安定性 近年,炭素の単原子鎖が作製可能であることが報告された.この炭素単原子鎖は,1次元非線形格子によりその振動がモデル化できると考えられ,従って,空間局在モードの存在が予想される.しかしながら,従来のモデルでは各質点の運動も1次元に限定されるのに対し,実際の系では原子は3次元に運動する.このように,格子の次元以上の自由度を持つような系に対しては,これまでほとんど研究されてこなかった.そこで,本研究では,炭素単原子鎖と幾何学的に同等の数理モデルである準1次元FPU格子を考え,空間局在モードの存在や安定性について数値的に検討を行った.結果として,これまでに確認されていない格子軸に垂直な振動(横振動)による空間局在モードの存在を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究者が,平成26年度より新たな研究機関へ移ったため,実験装置の解体・再構築が必要となり,やや実験の遂行が遅れることとなった.平成27年度は,研究計画に挙げた実験を遂行できるよう進めていく予定である.一方で,空間局在モードの生成については,当初の計画とは異なる形ではあるが,ノイズを加えることによって可能となることが数値的・実験的に示された.これは当初の計画よりも早く研究が進んだ部分である.また,移動型空間局在モードの研究やパラメトリック励振による不安定化に関する研究はおおむね予定通り進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も引き続き実験によるパラメトリック励振を用いた空間局在モードの不安定化および移動型空間局在モードの生成について検討していく.また,移動型空間局在モードの分岐については数値的により詳しく検討する予定である.このことにより,空間局在モードの移動を制御するための重要な知見が得られると期待される.一方,ナノテクノロジーへの応用を目指し,炭素単原子鎖における解析を継続する.特に,理想的なFPU格子ではなく,炭素原子間の相互作用を考慮した格子モデルにおいて空間局在モードの存在や安定性,移動性について検討していく.平成27年度後期には,マイクロデバイスによる空間局在モードの生成に向けた研究を行う.
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Causes of Carryover |
研究者が,平成26年度より新たな研究機関へ移ったため,実験装置の解体・再構築が必要となり,実験的研究の進行がやや遅れているため.また,コンピュータを用いた数値的研究を重点的に行ったため,やや実験に関する物品の支出が減ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては,実験に必要な部材や機器を購入する予定である.また,成果発表のための旅費や雑誌投稿料等へ助成金を充てる予定である.
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