2013 Fiscal Year Research-status Report
長さ標準になった光コムを用いた計測現場用高精度校正システムの開発
Project/Area Number |
25820171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
韋 冬 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (70610418)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光周波数コム / 長さ計測 / 計測標準 / 物差 / 屈折率 / 感度係数 / 繰返し周波数 |
Research Abstract |
2009年、フェムト秒光周波数コム(光周波数コム)が長さの国家標準になった。光周波数コムの中心周波数は1560ナノメートルにあり、光の損失が低いため、光ファイバーで光周波数コムを製造工場や測定室などに配信できる。光周波数コムを使用した高精度で任意かつ絶対的長さ計測法が実現されれば、いつでもどこでもだれでも長さの国家標準にアクセスできることを意味する。計測現場における長さ計測の精度は格段に上がり、科学研究や生産活動にこれまでにない大きなインパクトを与えると考えている。 長さ計測において使うべき物差に関する理論的な検討をした。メートルは真空中に1秒間に光が伝搬する長さの約3億分の1で定義されている。単色光であるよう素安定化ヘリウムネオン(He-Ne)レーザーの周波数(波長)が安定しているため、波長=c/周波数 のようにメートルの実現に使われた。 cは真空中の光速である。光周波数コムは同間隔で並べられた複数の周波数のコヒーレント結合である。光周波数コムは各波長の集合である隣接したパルス繰返し間隔長(adjacent pulse repetition interval length,APRIL)APRIL= c/繰返し周波数 を持っている。この式は波長を得る式と同じようにメートルの定義から導かれていることを強調したい。平成25年度は、APRILを用いた長さ計測の可能性を探求した。 工学実験に向けて、必要なフェムト秒光周波数コム光源を構築した。平成25年4月に長岡技術科学大学へ移動した。本研究に必要なフェムト秒光周波数コムを所有していない。平成25年度、フェムト秒光周波数コムのレーザーヘッドを会社に試作してもらう。そのための技術要件を検討し、実験部品のスペックを見積もって、調達し、基礎となるレーザー光源を構築した。そして、フェムト秒光周波数コムの動作を確認した。 さらに、上記の研究成果について、得られた結果をまとめて論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的な検討が進んでいる。波長と周波数との関係から、フェムト秒光周波数コム光源を用いた場合、計測に使うべき、長さの物差、パルス列の繰返し間隔長、を明確化した。波長とパルス列の繰返し間隔長との対称性、位相屈折率と群屈折率との対称性から、その特性を検討した。 実験に関しては、フェムト秒光周波数コム光源が作動することを確認した。光りスペクトルアナライザで光源のスペクトルも確認した。計測実験に向けて、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これからは波長とパルス列の繰返し間隔長との対称性に注目し、パルス列の繰返し間隔長を用いた長さ計測法を再考する必要性がある。例えば、単一な物差により、絶対計測を実現できるかどうかなどの点を吟味する予定である。これまでに提案されたフェムト秒光周波数コム光源を用いた計測法を比較し、その特徴を融合した新たな計測法を提案する予定である。空気中の光計測において、特に長距離の測定において、空気屈折率の影響は非常に大きい。空気の屈折率は温度、気圧、湿度、CO2濃度(これらを空気パラメータと呼ぶ)の関数である。例えば、温度一度が上昇したとき、光学的な長さが―1 ppm減少する。そのため、空気の屈折率を補正し、空気中で計測した長さを真空中の長さに変換する必要性がある。真空中の長さに変換された値が比較可能な長さとなるからだ。光路における空気パラメータの分布があった時、複数のセンサを用いて、平均化した空気パラメータを計測することができる。Openな環境下における精密な空気パラメータに関する計測が困難である。この方式では、8桁の計測精度を達することが難しい。また、空気の屈折率の波長依存性を利用して2波長(2色)で距離を測定し、屈折率の分布を補正する方法が提案され、複数の研究者によって研究されている。最近では、波長を用いた2色法がよく研究される。本研究は波長の代わりに、APRILを用いた2色法を検討する予定である。 また、提案した方法を構築した光学実験系で試す。
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