2015 Fiscal Year Research-status Report
超高感度QCMの実現に関する研究~周波数オフセット位相同期型QCMの開発~
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25820175
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今池 健 日本大学, 理工学部, 助教 (10548093)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | QCM |
Outline of Annual Research Achievements |
数ナノグラム以下の付着物質の質量を検出できるQCM(水晶振動子微量秤)の測定時間短縮と測定精度を向上するための新たな測定システムとして提案した位相同期型QCMの性能をさらに改善するため周波数オフセット位相同期型QCMについて以下の研究を行った. 位相同期型QCMは水晶発振器の出力において同一の発振周波数とすることで位相同期が可能となるが,1枚の水晶基板上に複数の振動子を作製した場合水晶振動子の持つ非線形性により,周波数引き込み現象が生じる.本来はPLL(位相同期ループ)の帰還制御によって同一周波数とするため,周波数引き込み現象が生じると制御不能な状態となることから,水晶振動子上での振動は互いに独立していなければならない. 当初,同一水晶基板上に水晶振動子を2組作製し,僅かな周波数差を有する状態の振動子を用いることで2組の水晶発振器を動作させ,周波数シンセサイザ方式による逓倍・分周で周波数合成し同一周波数を発生させ位相同期させる手法を提案したが,DDS(ダイレクトディジタルシンセサイザ)を用いることで同様の機能を持たせ,より簡便な構成をすることに成功した.これにより,非線形性による周波数引き込み現象を回避し,水晶基板上では異なる周波数で振動させ,位相同期させる方式が有効である事を実証したほか,回路定数の工夫により従来方式よりも検出感度を3倍に高めることに成功した.また,エタノール検出を目的としたセンサー膜に使用するオレイン酸膜の塗布条件について検討し,水晶振動子の電気的特性について明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
周波数オフセット位相同期型QCMのガスを用いた実測において,当初設計したガスの流路系統に問題が生じ,設計変更および動作テストに時間を要したほか,ガスの感応膜塗布の再現性が乏しく,塗布技術の安定化と性能向上に予想以上に時間を要したことで,目的ガスを使用した実験の開始が大幅に遅れたため当初目標としていた高感度・短時間計測を達成できていないため遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
センサの高性能化と感応膜塗布後のQCMセンサーの歩留まりの向上を行うほか,ガス発生装置を用いて実測を行い,周波数オフセット位相同期型QCMの小型化と検出能力向上等について総合的に評価を行う.また,DDSの使用によって発振器出力の位相雑音が増加し,検出感度の低下をもたらす可能性があるため,フィルタ回路および適切な周波数比等について明らかにする.
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Causes of Carryover |
周波数オフセット位相同期型QCMのガスを用いた実測において,当初設計したガスの流路系統に問題が生じ,設計変更および動作テストに時間を要したほか,ガスの感応膜塗布の再現性が乏しく,塗布技術の安定化と性能向上に予想以上に時間を要したことで,目的ガスを使用した実験の開始が大幅に遅れたことのほか,研究成果発表に必要な旅費等が当初の予定額よりも低額で済んだため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ガス流路経路の構築とガス発生源の購入および,実証実験におけるセンサの洗浄・メンテナンス等に必要な消耗品に使用する.
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Research Products
(2 results)