2016 Fiscal Year Research-status Report
サイバーフィジカルシステム論的アプローチによる高信頼な自律分散協調制御
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25820180
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 直樹 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80637752)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 協調制御 / マルチエージェントシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、物理制約や情報通信制約を考慮した高信頼な自律分散協調制御法を確立することである。平成28年度はネットワーク通信の帯域に関する制約を考慮した協調制御の基礎研究を行った。一般的な離散時間の合意制御では、ある一定のサンプリング周期ごとに他のエージェントとの通信を行う必要がある。このような制御法は時間駆動型制御と呼ばれ、合意制御に関する既存の多くの研究はこの時間駆動型制御を対象にしている。しかし、時間駆動型制御では、他のエージェントとの状態の差が小さい時など、それほど他のエージェントとの通信が必要ではない場合においても、常にサンプリング周期毎に通信が行われてしまう。このように、時間駆動型制御ではエージェント間の通信に関して不必要に電力やネットワーク帯域を消費してしまうため、バッテリを搭載した小型のモバイルエージェントを用いたフォーメーション制御など各エージェントの電力資源が限られている状況や限られたネットワーク帯域のみしか使用できない無線通信による情報伝達が必要な状況といった現実的な場面での適用を考える上では望ましくないことも多い。そこで、本研究では、必要なときにのみ他のエージェントと通信を行う事象駆動型合意ダイナミクスについて考察し、反復アルゴリズムの収束性やリアプノフの安定性理論に関する議論を用い、通信回数を削減しつつ合意を達成するための十分条件を導出した。また、平成28年度は分散協調制御のカメラセンサネットワークへの応用について検討し、複数のカメラがターゲットを取り囲むように追跡を行う協調取り囲み制御法を提案した。平成28年度は、この他にも離散時間協調制御とグラフ信号処理との理論的関連性に着目し、信号間のネットワーク構造を考慮して効率的に画像の平滑化が実現できるバイラテラルフィルタを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はおおむね順調に研究を進めることができた。当初の研究計画の通り、エージェント間の通信制約を考慮した事象駆動型の合意制御や分散最適化アルゴリズムを導出した。これらの研究成果により、個々のエージェントの電力資源やネットワーク帯域が限られる場合など、より実システムの運用状況に近い場合における合意制御や分散最適化の手法を示すことができた。また、合意制御に基づくカメラセンサネットワークによる分散取り囲み追跡に関する研究も行った。平成28年度はこれらの成果をもとにした学術論文5本が採録された。また、招待講演2件、国際学会1件、国内会議7件の発表を行うことができた。以上より、平成28年度までの研究により本研究の目的はほぼ予定通り遂行されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、平成28年度で得られた成果をもとに、マルチエージェントシステムの協調制御においてエージェント間の通信制約を考慮した事象駆動型協調制御についての研究をさらに進める予定である。平成28年度はオフライン分散最適化に関して考察してきたが、今後は機械学習の分野で盛んに研究されているオンライン最適化の分散的解法への応用について検討する。また、平成28年度までは劣勾配法に基づく分散最適化を考えてきたが、劣勾配法は一般に収束が遅く、大規模システムへの適用には向いていない。そこで、近接アルゴリズムによる分散最適化や劣勾配法の高速化法についても検討する。さらに、協調制御の工学的応用として、平成28年度で提案したカメラセンサネットワークによる協調取り囲み制御則を実機システムへ実装し、提案法の有効性を実証する。
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Causes of Carryover |
平成28年7月、マルチエージェントシステムによる分散最適化に関する研究成果を国際学会へ報告する予定であったが、査読者からの指摘により、最適解への収束に関する証明を再検討する必要が生じた。そのため、指摘があった箇所の修整を実施したうえで、平成29年7月に開催予定の別の国際学会への投稿を行うことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に参加予定の学会参加費等に使用予定。
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Research Products
(15 results)