2013 Fiscal Year Research-status Report
鋼構造物における地震時脆性破壊発生機構の解明と汎用性の高い限界状態評価手法の提案
Project/Area Number |
25820199
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 洋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10636434)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地震時脆性破壊 / 鋼構造物 / 溶接部 / 修正ワイブル応力 |
Research Abstract |
25年度の主たる成果は,脆性破壊発生時の限界荷重データの取得と亀裂先端におけるFEM解析による局部的負荷状態の特定であった.後述する通り,26年度においても追加検討する必要となる可能性を残したが,当初26年度に実施する計画であった破壊条件の定式化に着手することができた. 脆性破壊発生時の限界荷重データとしては,2種類の鋼材(SS400材とSM570Q材),2種類の供試体切欠き形状(0.5mmと5.0mm),2種類の温度(-196度と-100度)について破壊実験を行い,代表者らの既往の実験結果と合わせて,合計77サンプルのデータを得ることができた. 亀裂先端における局部的負荷状態の特定としては,上記のすべての供試体の実験をFEM解析によりシミュレートした結果,実験で破断荷重が計測された時点における亀裂先端の最大主応力,相当塑性ひずみの分布データを得ることができた.解析にあたっては,SM570Q材の低温における材料データは得られていなかったため同鋼材の載荷試験を別途実施し,FEM解析を援用することで応力-ひずみ関係の同定を行った. 破壊条件の定式化としては,Bordetらの修正ワイブル応力に着目し,これに基づく定式化を目指した.修正ワイブル応力はマイクロクラックの発生・進展挙動を考慮した鉄鋼材料にも適用可能なパラメータで,供試体あるいは構造物の形状や初期亀裂の深さ,そして温度に依存せず脆性破壊の発生を説明できる指標とされている.これを上述の供試体の実験結果に適用したところ,供試体破断時の修正ワイブル応力(限界修正ワイブル応力)がほぼ一定となる可能性があることを見出した.このことは,Bordetらの修正ワイブル応力が溶接部を起点とする浅い亀裂からの脆性破壊の予測にも適用できる可能性があることを意味している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】で述べた限界修正ワイブルは,いくつかの仮定の下に計算したものである.その根拠については追加実験により妥当性を示す必要があると考えており,申請書にない検討項目が新たに発生した.一方で,26年度のテーマであった破壊条件の定式化に着手することができており,総合的には当初の予定通りの達成度であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
準備に時間を要する可能性があるが,低温での引張試験と破面観察により【現在までの達成度】で述べた仮定の妥当性を検証したい.試験中の温度制御をいかに行うかを,先行研究を参考に今後考えていきたい.また,地震時脆性破壊の発生限界に大きな影響を及ぼすひずみ速度や塑性ひずみ履歴の影響が,限界修正ワイブル応力にどのように顕われるかについても確認する必要があると考えている.
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