2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25820221
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ファイトレメディエーション / 車軸藻類 / 重金属除去 / 石灰化 / 生態系 |
Research Abstract |
車軸藻は、カルシウム濃度の高い水域で光合成の過程で炭酸カルシウムを産出、表皮の外部を石灰化させる。この石灰層に重金属やリンなどの栄養塩が取り込まれると再び溶出することがないために、車軸藻の枯死後も水中から安定に除去することが可能になる。本研究ではこうした機構を利用して、ファイトレメディエーションに利用することを目的にした。本年度は計画に従ってイトシャジクモを用いた、異なるカルシウム濃度やマグネシウム濃度を用いた培養実験を行い、水中のカルシウム濃度と石灰化の量との関係、石灰化が車軸藻に与えるストレスや生長に与える影響の把握、水中のマグネシウム濃度との影響の把握を行った。 車軸藻の生長は、カルシウム濃度が40ppm程度まではカルシウム濃度が高い方が良好になるものの、それ以上高い濃度ではカルシウムがストレスとして働き生長はやや鈍化、最大量子収率等も低下することが確認された。一方で水中にマグネシウムが含まれると、生長はむしろ促進され、最大量子収率等も増加することがわかった。車軸藻に含まれるカルシウム分、マグネシウム分共に水中の濃度の増加とともに増加するものの、量としてはカルシウム濃度の方が圧倒的に大きくなることがわかった。また、カルシウムとマグネシウムが共存する培養液中では石灰化が多少阻害されることが明らかになった。 さらに、エネルギー分散型X線解析と走査型電子顕微鏡を用いた元素の分布解析を行った結果、カルシウム分はほとんど表皮の外側に炭酸カルシウムとして蓄積されているのに対し、マグネシウム分は細胞中に取り込まれ、サイトゾル中に分散していることがわかった。 重金属の吸着実験に関しては、亜鉛、カドミウム等を用いて行った。予想通り重金属は石灰層に取り込まれている割合が高く、またカルシウムに結合して存在することが明らかになった。 以上、今後の研究のために重要となる基礎的事項について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、石灰化に関し、主にカルシウム濃度の影響を把握する計画でいた。しかし、実際に実験を行ってみると、マグネシウムが存在する中では、石灰化が抑制され、また、ストレスの度合いも軽減されることが得られた。そのため、計画には上げていなかった、マグネシウムの影響把握も重点的におこなった。それによって、カルシウム自体はある濃度までは車軸藻の生長に正に働くものの、ある濃度を超えるとストレスとして働く。しかし、マグネシウムを加えることでストレスを軽減でき、これを利用することで車軸藻の増殖を促進できる可能性がでてきた。多くの車軸藻は現在絶滅が心配されており、増殖法を開発することは緊急を要する課題である。当初の計画になかった極めて重要な点である。また、重金属除去の実験の中で、現在福島原発で問題となっているセシウムの吸収実験を行ったところ極めて有効にセシウムを吸着することが確認できた。元々その可能性はあったことではあるが、非常に有用な発見である。これを元に、平成26年度には、除去対象の重金属の中にセシウムも加えることにした。 以上のように、当初予定しなかった現象が次々に発見できたことから、こうした分析も追加して行った。これが当初の計画以上に進展した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、当初の計画通り、車軸藻に働くストレスが生長や石灰化に働く影響把握を中心に研究を行う。また種を変えることで、生態学的に重要となる、パイオニア種と安定な群落をつくる種との比較も行うこととする。一方で平成25年度の結果からその有効性が明らかになった、車軸藻の石灰化を利用して、水中のセシウムを安定に除去することも、社会的な要請が高いことから同時に行うことにした。これには、塩化セシウムを利用することを考えており、このセシウムの分析には、原子吸光計を利用する。また、実験の数、それに伴う分析の回数も増加する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究計画は満たされたが、平成26年には、当初の計画の他に、平成25年度の結果からその有効性が明らかになった、車軸藻の石灰化を利用して、水中のセシウムを安定に除去することも、同時に行うことにした。これは社会的な要請が高いことによる。これには、塩化セシウムを利用することを考えており、このセシウムの分析には、原子吸光計を利用する。また、実験の数、それに伴う分析の回数も増加する。そのために、平成25年度の経費を若干切り詰め、平成26年度に回した。 当該助成金は、翌年度の研究費とともに、特に新しく加えた実験課題として、塩化セシウム等試薬類、また、原子吸光計のカラム、実験の数が増し分析の回数が増加することによって生ずる、試薬類、ランプ・ガラス器具等実験解析のための消耗品の経費に充当する。
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