2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25820221
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 車軸藻 / 石灰化 / セシウム / セシウム耐性 / 乱流ストレス / 乱流ストレス耐性 / 抗酸化特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は計画調書及び昨年度の実施状況報告書の今後の推進方策に従って研究を進めた。まず、社会的要請度が高いことから、昨年度の研究から明らかになったセシウムの吸着効果を調べた。実験では、よく洗浄した砂を敷いた1Lのフラスコを用いた。5%のHoagland溶液に、10mg/Lのカルシウム濃度で構成される培養液中でフラスコモを1週間培養後、異なる濃度の塩化セシウムを加え実験を行った。7日ごとに葉茎の長さを計測、また、実験終了時に、最大光量子収率、クロロフィルa、b及びカロティノイド濃度を測定、さらに、車軸層に取り込まれたセシウム量を測定した。セシウム濃度が高くなるにつて、伸長速度が低下、クロロフィルやカロティノイドの濃度も低下がみられることから、セシウムが車軸藻にとってストレスになっていることが確認できたものの、最大光量子収率については、セシウム濃度の増加に対して低下は見られず、植物体の観察からも車軸藻のセシウムに対する耐性は高いと判断された。また、車軸藻中のセシウム濃度は、培養液中のセシウム濃度の増加と共に、急激に増加していた。このことより、石灰化した車軸藻は、極めて高い効率でセシウムをとり取り込むことが示され、このセシウムは炭酸カルシウムに取り込まれていることも確認できた。 さらに、車軸藻の乱流ストレスに対する影響の把握を行った。ここでは、水槽中にイトシャジクモを培養、振動格子で強さの異なる乱流を発生させ、1週間ごとに、生長量や全クロロフィル、クロロフィルa、クロロフィル蛍光分析(Fv/FM)、IAA、POX、IAAO、CKX、IAA酸化酵素活性等を測定した。その結果、車軸藻の乱流下で酸化を促進するストレスが増加、色素濃度を低下させ、生長を阻害することが示された。車軸藻が静穏域を好むという生態学的結果を実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度、車軸藻の石灰化はセシウムの除去にも有効である可能性が示された。これに基づき、本年度は、セシウムを用いた吸着実験を行った。その結果、石灰化した車軸藻は予想以上にセシウムを吸着すること、また、吸着されたセシウムは炭酸カルシウムに吸着されていることが明らかになった。この結果は、社会性も考えれば当初の予想をはるかに超えた結果であるといえ、計画を超えた成果と言える。車軸藻のストレス耐性の把握については、振動格子を用いて発生させた乱流場で生長させた車軸藻のクロロフィル蛍光強度や生長ホルモン、抗酸化酵素の測定を行った。当初ばらつくことを予想していたものの、いずれも機械ストレス耐性が弱いという極めて整合性のとれた結果が得られた。このことは、車軸藻が静穏な水域を好んで生長するという通常の観測結果と一致していた。生態学的に得られる結果を生理学的な側面から実証する結果となった。新しい方向を開くものであり、当初の計画を超える成果ということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は当初、分解実験や分解後の有機物等の浮上実験等の実用に即した研究を計画していた。しかし、本年度の結果である、ストレス耐性指標の計測により、車軸藻の生息域を特定することが可能であるという極めて大きな独創的な着想を得た。来年度は、当初の計画に加え、この仮説に従い、ストレス因子を変えて耐性を生理学的側面から測定することを試みたい。これにより、生態学的に得られる結果を生理学的側面から実証していくという方法を確立することをめざす。
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Causes of Carryover |
平成26年度に計画していたセシウムに除去に対する効果の把握等、研究計画はほぼ満たされた。一方で、当初の研究計画調書にも記載されている、車軸藻自体の増殖を目指した、車軸藻の環境ストレス耐性から生息域の把握が行える可能性を得た。この発想は平成26年度後半期に得たものではあるが、その時点では車軸藻の生長時期を過ぎており、平成26年度中に行うことができなかった。そのため、それに使用を予定していた356,139円の予算を次年度に回す。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該助成金の一部は、翌年度の研究費とともに、平成27年度に新しく加えた研究項目である、環境ストレス耐性に伴う生息域把握の研究に充てる。具体的には、環境ストレスを発生させるための実験機材等の製作費及び薬品代等、さらに、環境ストレスの情報収集に充てる。
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