2013 Fiscal Year Research-status Report
高層気象観測と大気陸面データ同化によるカンボジア局地循環性降水のメカニズム解明
Project/Area Number |
25820222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻本 久美子 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80557702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ラジオゾンデ観測 / 局地循環 / 降水メカニズム / カンボジア / トンレサップ湖 |
Research Abstract |
カンボジアには,年間5倍程度も面積が拡縮する珍しい湖(トンレサップ湖)があり,その面積は最小時でも琵琶湖の約3.3倍と巨大である.その周辺域では水田稲作が営まれている.陸面の状態(湖陸の別,土地利用形態,植生状態,土壌水分量等)が地域の気象に大きく影響を与えていることは一般的にも知られているが,申請者はトンレサップ湖の大気への影響についてこれまで領域気象モデルによる数値実験で検討を重ね,湖によって局地的な大気循環流が形成され,乾季の初期に湖西部に局地的な降水をもたらしている可能性が高いことを示してきた.また,局地的な降水が生じる地域が国内随一の穀倉地帯に該当することから,トンレサップ湖により生起される乾季の雨がこの国の農業生産をも支えている可能性を示してきた.しかし,カンボジア国内ではラジオゾンデによる高層気象観測がなされておらず,世界各地のどの全球モデル(GCM)にもカンボジア国内の現地観測データが反映されていないことから,現在我々が数値モデルと衛星観測で理解している世界は,実態を十分に表し切れていない可能性があり,降水予測に応用していくには限界がある. 本課題において,H25年度は,カンボジア国内において湖上と陸上(水田地帯)の2か所で同時にラジオゾンデによる高層気象観測を実施した.ラジオゾンデによる現業観測はカンボジアでは行われておらず,特に湖上での観測は困難なことから,今回取得したデータは世界的にも極めて貴重なものである.とりわけ今回は,カンボジア政府からの全面的な協力を受け,一部の期間で昼夜を徹して2~3時間毎に観測した.治安上の問題から夜間のデータは取得しにくいため,湖上と陸上の双方での昼夜連続データ取得は,非常に価値あるものである.現在,取得したデータの解析を進めているほか,数値解析による降水メカニズムの理解の深化に向けて,数値モデルのセットアップを行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究申請時に立案した研究計画に沿って,計画通りに研究が進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は,(i) ラジオゾンデによる観測データの解析と,(ii) 領域気象モデルのカンボジアへの適用,(iii) ラジオゾンデデータ及び衛星データを用いた雲微物理データ同化の導入,を行い,その結果を用いてカンボジアの局地循環による降水メカニズムの解明について理解を深める.また,その結果をカンボジア各地のステークホルダーと共有する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定よりも観測旅費が安く抑えられたことから,次年度使用額が生じた. H26年度は,研究成果を広く公表して国際的な場で議論を進めるべく,国際会議への参加費やそれに伴う旅費として使用する予定である.
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Research Products
(3 results)