2014 Fiscal Year Research-status Report
高層気象観測と大気陸面データ同化によるカンボジア局地循環性降水のメカニズム解明
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25820222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻本 久美子 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80557702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大気陸面相互作用 / 湖面蒸発 / 局地循環 / カンボジア |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,昨年度に実施した気象観測データを解析した.その結果,トンレサップ湖(カンボジア)湖面からの潜熱・顕熱は,プレモンスーン期・ポストモンスーン期ともに,中高緯度温帯気候の事例等から推測される妥当値に比べてかなり小さく,熱収支残差(純放射量-潜熱-顕熱)が正の値で無視できない量であった.特にポストモンスーン期は,年間平均気温よりも冷涼で,中高緯度地帯の湖では放熱期(熱収支残差<0)に相当することから,この時期にも残差が正であることは,興味深い.一方,湖水温度は,年間を通してほぼ一定であった.このことから,余剰熱の使途として,以下の可能性を検討した:(i) フルモンスーン期の湖面風速が強い時期に強制乱流で潜熱・顕熱が(予想以上に)放出されており,この時期に熱収支残差が負となっている,(ii)湖へ流入する支川が湖水に比べて低温で,湖で熱せられた水がメコン川下流のベトナムデルタへと流出している,(iii) 湖底において,より低温の地下水とのやり取りがある,(iv) 湖の多くの領域(観測地点を含む)からは潜熱・顕熱の放出量が小さいが,数値計算によると線状の湖上対流が発生している可能性が高いため,これらの地点上においてのみ,大気の対流不安定性によって多量の潜熱・顕熱が発生している. 上記(ii)について検討するため,今年度に湖および湖流出入支川の複数個所・複数深度に新たに水温計を設置した.また,既存の降雨-流出モデルに湖モデル(氾濫モデル)と熱移動モデル(水温モデル)を結合したモデルを開発中である.さらに,(i)と(iv)については, 2014~2015年にかけて米国で新たに開発された,気象モデルWRFと湖熱モデルのオンライン結合モデルを入手し,本研究の対象域に適用して,現在,解析を進めているところである.(iii) については,当該分野の専門家とともに,検討を始めているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が体調不良により年度中に長期休暇を取得したため,研究の進捗が予定よりも遅れた.
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Strategy for Future Research Activity |
地上観測データを初期値・境界値として利用しながら上記の気象モデル(WRF+湖モデル)を適用することによって,対象域の陸面・湖面の状態が,局地的な地域性降水に与える影響について,数値解析を進め,そのメカニズムを明らかにする.
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Causes of Carryover |
研究代表者の体調不良に伴う長期休暇により,当初予定していた海外での学会発表を取りやめたため,それに伴う旅費が未使用となった.その代わりに,次年度に学会発表を予定しており,本経費はその費用として充てる予定である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外での学会発表の旅費として使用予定である.
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