2014 Fiscal Year Research-status Report
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25820226
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
瀬戸 心太 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50533618)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水災害 / 衛星観測 / 降水 / 気象観測 / 流量観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
水災害の早期警戒システムの試験地域として、九州地方(東経129度~132度、北緯31度から34度)を選定した。基本となる水文モデルとして、統合水資源モデルH08を利用することにした。分解能を緯度1分×経度1分として、九州地方にH08を適用した。まず、海陸分布・土地被覆分類・標高などのデータを準備した。土地被覆分類に対して、既存の文献資料を参考に、アルベドの値を決定した。次に、2002年を対象に、陸面モデルに入力する地表面気象データセットを日単位で作成した。降水量・気温・風速・湿度・気圧については、気象庁のアメダスデータを利用し、下向き長波放射および下向き短波放射については、農業環境技術研究所よりデータを取得した。内挿してグリッドデータを作成する際に、降水量・気温・気圧・下向き長波放射については、標高依存性を考慮した。降水量については、グリッドデータを、内挿に使用しなかった独立した観測データで検証し、良好な結果を得た。また、雨雪判別の影響を見るため、降雪量についての検証も行った。陸面モデルのパラメータについては、Hanasaki et al.(2014)によるタイ・チャオプラヤ川流域にH08を適用した研究を参考にして、4つの主要パラメータの感度分析を行い、土壌の深さに関係するパラメータ(SD)の影響が大きいこと、九州地方ではSD=2mが適切であり、グローバルによく使われる1mより大きく、タイで適切とされる2~4mよりも小さい傾向があることが分かった。さらに、河道網データを作成し、九州地方の20の一級河川が適切に表現されるようにした。陸面モデルと河道流下モデルを結合して計算された河川流量を、各河川の代表的な流量観測所において、実測値と比較し、月単位の推定にはついては良好な結果を得た。そのほか、衛星観測の降水量データに、極値統計理論をあてはめ、降水危険度を算出する手法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の2年目である平成26年度は、早期警戒システムの中心となる水文モデルと、対象地域を決定し、過去のデータを対象として、実際にモデルを動かし検証まで行うことができたという点が、大きな成果であると考える。当初の研究計画の骨組みとなる部分が完成したことで、3年目に肉付けを行い、期間全体の研究目標を高いレベルで達成できる見通しがたった。また、従来雨量計データのみを用いていた降水量の極値統計について、衛星観測データを用いるという挑戦的なテーマについても検討を進めており、3年目にシステムへの実装が可能と期待できる。こうした点から、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる平成27年度には、水文モデルについて1日ごとに自動的に処理するシステムを構築する。これにより、気象データについて、前日分をインターネット経由で取得し、1日分の処理を行い、河川流量などをほぼ実時間で算出できるようになる。処理結果は、河川流量など主要変数について地図や時系列の図を自動的に作成するほか、極値統計処理を行い、水災害の危険度を評価する。さらに、入力気象データへの衛星観測の利用、出力された河川流量から外水氾濫に関する計算等を行うことで、可能な限り、より先進的で実用的なシステムへと発展させる。研究成果の学会発表・論文発表についても、3年目は積極的に行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、パソコンなどの研究遂行に必要不可欠な物品の購入、衛星観測に関する研究成果の発表のため、および、水文モデルや衛星観測に関連する学会・勉強に参加し情報収集を行うための旅費を支出した。水文モデルを基礎とする早期警戒システム本体については、設計・開発に専念し、研究成果の発表は行わなかったため、また、早期警戒システム本体を実装するための計算機の購入を仕様や価格の調整が十分でなく見合わせたため、支出額が予定より少なくなり、次年度に使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、水文モデル・衛星観測の各要素および早期警戒システム本体についての成果発表を学会発表および論文投稿により積極的に行う予定であり、旅費および論文投稿費用に多くの支出を予定している。また、早期警戒システムを実装するための計算機についても購入を予定している。
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Research Products
(4 results)