2013 Fiscal Year Research-status Report
オーセンティシティを考慮した文化遺産におけるアクセス補助設備の評価に関する研究
Project/Area Number |
25820248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
江守 央 日本大学, 理工学部, 助教 (30328687)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 観光ユニバーサルデザイン / バリアフリー / 文化遺産 / アクセスビリティ / 移動円滑性 / オーセンティシティ / 地形分析 / 車椅子 |
Research Abstract |
本研究の目的は文化遺産を対象としたユニバーサルデザインに基づいた整備妥当性を明らかとすることにある。この実現には個々の文化遺産が持つ文化的価値(オーセンティシティ)と同時に、地域にとっての観光的価値として有効活用するための移動円滑性(アクセスビリティ)も同時に重要である。このように,文化遺産のアクセスビリティについて「地形」、「建物」によって構成されるオーセンティシティの視点から考察することが本研究のオリジナリティである。 そこで,本年度は実施計画に掲げたとおり,対象となる鎌倉ならびに京都の「境内の地形を含めたオーセンティシティ評価」として、GISソフトを使って地形解析を実施した.次に実施計画どおり「オーセンティシティとアクセス評価」として、文化遺産が有するアクセス補助施設の有無ならびに機能・形状・スケール等の把握のため現地調査を実施した.この結果,地形の厳しさが文化遺産のオーセンティシティを向上させている一方で,アクセスビリティを低下させている事例が多く見られることが明らかとなった.これらの分析結果は,公社)土木学会土木計画学研究発表会(2013.11.2-3開催)にて「文化遺産のユニバーサルデザインとオーセンティシティに関する研究―鎌倉に着目して―」として発表,また同学会第41回関東支部技術研究発表会(2014.3.13-14開催)「文化遺産におけるバリアフリーの基礎的研究~京都の世界遺産を対象に~」として発表を行い.前者については,同学会土木学会論文集D3・特集号(土木計画学研究・論文集)へ投稿し,現在査読中である. さらに,平成26年度に予定している「文化遺産におけるアクセス補助設備の整備妥当性評価」については,本年度500名を対象とした利用者WEBアンケート調査が実施できたため,現在分析を進めているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は文化遺産を対象とし,ユニバーサルデザインに基づいたアクセス補助設備の整備妥当性を明らかとすることにある.このことから,当初から平成25年度は,研究対象の現状把握として,「境内の地形を含めたオーセンティシティ評価」,「オーセンティシティとアクセス評価」を研究計画に掲げてきた. まず「境内の地形を含めたオーセンティシティ評価」については,対象地である鎌倉ならびに京都の地形分析を計画通り遂行し,その成果をまとめた上で,予定していた関連学会への研究発表を行っている.また,「オーセンティシティとアクセス評価」についても,研究室所属学生の協力のもと,現地調査を実施した上で,年度内に成果をまとめ,研究発表を行っている.以上のことから,平成25年度に計画していた研究については概ね順調に進んでいると評価できると考えている. さらにこれらの成果については.平成25年度末に査読論文としてまとめて,現在査読中であるが投稿中であることや,平成26年度に計画として掲げた「文化遺産におけるアクセス補助設備の整備妥当性評価」についても,調査をすでに実施し,平成26年度の計画遂行に備えている.このように予定よりも早めて成果を上げる努力をしてきたことから,当初の計画よりも若干ではあるが,進展していると評価できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
整備妥当性評価について、文化的価値と観光的価値における文化遺産の事例を京都・鎌倉に限らず、顕著なアクセス対応を有とする他の文化遺産等で評価も必要である.このことから,これらに相当する文化遺産を想定したアクセス補助設備の整備に関する支払い意思額調査をすでに実施しており,この分析を進めた上で,整備の必要性について定量的に捉えることができるものと考えている. また,平成25年度の調査・分析結果に基づいて,スロープ等が想定されるアクセス補助設備が境内のオーセンティシティにどの程度影響しているかを明らかとする。この評価項目はa.スケール、b.素材(色などを含む)、c.設置位置、d.主建物に対する接し方、e.デザイン-1(仮設性)、デザイン-2(伝統性)、f. 環境の項目を明らかとする。例えば、補助設備のスケールは本堂のボリュームに対して,どの程度の大きさが妥当か。あるいは素材は本堂の素材との関係で同質,異質か,位置は本堂の正面性との関係で,背後か,側面か全面かを,接し方は本堂との接続が点的,線的か,面的かを,デザインについては,本格的か,仮設的か,また伝統性については伝統的か現代的かを各境内において評価の妥当性を検証する。 また,これまでアクセスビリティについては,全体の回遊性として捉えてきたものの,車椅子利用者にとっての利用しやすい優先順位については考慮せずにいたことから,それぞれのアクセス補助設備の重みについても考慮すべきであると考えている. これらの得られた研究結果については、取りまとめて土木学会への成果発表を計画している。
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