2013 Fiscal Year Research-status Report
既存低強度コンクリート柱梁接合部の構造性能評価と補修効果の検証
Project/Area Number |
25820261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
八十島 章 筑波大学, システム情報系, 助教 (80437574)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低強度コンクリート / 丸鋼 / 主筋抜け出し / 接合部せん断破壊 / 接合部アスペクト比 / 十字形 / ト形 / 等価粘性減衰定数 |
Research Abstract |
本研究は,既存低強度コンクリート建物の耐震性能評価手法の確立および耐震診断・改修の基準や指針の作成を目指し,低強度コンクリート柱梁接合部の耐震性能および抵抗機構について構造実験を通じて解明することを目的としている。本年度は,旧耐震基準で設計された既存低層RC造建物を想定した,実大規模の低強度コンクリート柱梁接合部の構造実験を2つのシリーズで実施した。シリーズIの試験体は,梁および柱の反曲点間距離を共通とし,変動因子を加力履歴,梁および柱の主筋量,梁せいと柱せいの比,梁幅,コンクリート強度とした十字形柱梁接合部7体である。シリーズIIの試験体は,梁断面260×480mm,柱断面400×400mmとし,変動因子を接合部形状,主筋種類,軸力比とした十字形およびト形柱梁接合部5体である。シリーズIの結果として,梁せいと柱せい比が1.0以下の試験体は梁主筋の抜け出し後の梁端コンクリートの圧壊で最終破壊に至り,梁せいと柱せい比が1.3の試験体は接合部せん断破壊で最終破壊に至ることが把握された。接合部の損傷程度は,梁の断面寸法による影響が最も大きく,その他の変動因子による影響は小さかった。最大耐力は,加力履歴および主筋量による影響は比較的小さく,梁の断面寸法およびコンクリート強度による影響を大きく受けることが明らかにされた。シリーズIIでは,丸鋼の試験体は梁主筋の抜け出し後の梁端コンクリートの圧壊に至り,異形鉄筋の試験体は接合部せん断破壊に至った。異形鉄筋の試験体の最大耐力は,日本建築学会の終局強度型指針式で評価可能だったが,丸鋼の試験体の最大耐力は,既往の評価式では危険側の評価で精度良く評価できなかった。また,ポストピーク挙動は,いずれの試験体も層間変形角の増大に伴って緩やかに荷重低下し,逆S字型の履歴性状が顕著で等価粘性減衰定数の小さい復元力特性になることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,これまでにほとんど研究されていなかった低強度コンクリート柱梁接合部の構造性能を実験的検討により明らかにし,破壊性状,履歴特性,部材耐力,靭性能,多数回繰返し作用の影響,腰壁・垂れ壁の影響,エポキシ樹脂注入の補修効果を,付着特性と破壊メカニズムに立脚した力学的考察を通じて性能評価することを目的としている。現在までに,1970年以前の設計基準に準じた実大規模の低強度コンクリート柱梁接合部の加力実験を行い,梁および柱の主筋量,梁せいと柱せいの比,梁幅,コンクリート強度,加力履歴,接合部形状,主筋種類,軸力比を変動因子とした12体の試験体により破壊性状,履歴特性,部材耐力,梁主筋の抜け出し量,靭性能を把握し,平成25年度に計画していた目標をおおむね達成した。接合部パネルの損傷度合いおよび最大耐力は,梁せいと柱せいの比である接合部アスペクト比による影響が大きく,梁・柱の主筋量や軸力比などの他の構造因子による影響は比較的小さいことを明らかにした。これらの研究成果は平成26年度の日本建築学会大会および日本コンクリート工学会年次大会において発表し,情報発信する予定である。今後は,まだ十分な検討が進んでいない抵抗機構に基づく柱梁接合部の終局強度および靱性能の評価,エポキシ樹脂注入の補修効果の検証,多数回繰返し作用の影響,腰壁・垂れ壁の影響について,応力伝達機構のモデル化および構造実験による検証を行い,低強度コンクリート柱梁接合部の構造性能評価を進展させるとともに,既存低強度コンクリート建物の残存耐震性能を明らかにすることが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,低強度コンクリート柱梁接合部の構造性能を実験的アプローチにより明らかにし,付着特性と応力伝達機構に基づいて性能評価することを目的としている。これまでに,1970年以前の設計基準に準じた実大規模の低強度コンクリート柱梁接合部の加力実験を行い,梁および柱の主筋量,梁せいと柱せいの比,梁幅,コンクリート強度,加力履歴,接合部形状,主筋種類,軸力比を変動因子とした試験体によりひび割れ性状,復元力特性,終局強度,梁主筋の抜け出し量,等価粘性減衰定数を把握した。 今後は,抵抗機構に基づく柱梁接合部の終局強度評価,エポキシ樹脂注入の補修効果の検証,多数回繰返し作用による付着特性およびコンクリート圧縮特性の変化を考慮した部材強度の評価,腰壁・垂れ壁の接合部せん断強度に及ぼす影響について解明し,力学的モデルの導出および実験的アプローチにより低強度コンクリート柱梁接合部の構造性能評価を推進する。抵抗機構に基づく柱梁接合部の終局強度については,接合部内のコンクリート圧縮束によるストラット機構モデルを適用させ,ストラット角度により接合部アスペクト比の影響を考慮し,コンクリートの応力-ひずみ関係,モールの応力円の理論,有効圧縮強度,周辺部材の拘束効果などを駆使して接合部せん断強度算定式を構築する。梁の端部コンクリート圧壊による終局強度について,部材変形の増大に伴う丸鋼の付着特性の変化を定式化し,付着力を考慮した累加強度式による強度評価を検証する。エポキシ樹脂注入の補修効果の検証,多数回繰返し荷重の構造性能への影響,腰壁・垂れ壁の接合部せん断強度への影響については,実大規模の低強度コンクリート柱梁接合部の構造実験を行い,ひび割れ性状,終局強度,復元力特性を検討するとともに,その結果を抵抗機構モデルに反映させて梁および接合部の終局強度を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低強度コンクリート柱梁接合部試験体のエポキシ樹脂注入による補修を平成26年3月に実施し,その補修費および補修関連消耗品費が3月末までに支払い完了できなかったため。 平成26年3月に実施した試験体のエポキシ樹脂注入補修費および関連消耗品費の支払いに使用する。
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Research Products
(2 results)