2013 Fiscal Year Research-status Report
半屋外環境における滞在者の温熱環境適応および熱的快適域に関する研究
Project/Area Number |
25820285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中野 淳太 東海大学, 工学部, 准教授 (30350482)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半屋外環境 / 熱的快適性 / 環境適応 / 放射環境 / 日射 / 熱的快適域 |
Research Abstract |
平成25年度は日射のある屋外空間の熱的快適性評価を目的とし、日射を考慮した平均放射温度であるSOL_MRT及びそれを SET*に組み込んだSOL_SET*を提案した。また被験者実験の温冷感とSOL_SET*の比較により温冷感指標としての妥当性を検証した。 SOL_MRTとは6方向別の日射および赤外放射の測定結果から求める平均放射温度で、6面に入射する放射を重み付け係数で平均化したものである。これをSET*算出の際、平均放射温度の項目に代入することで屋外の温冷感指標SOL_SET*とした。各被験者の温冷感申告時のSOL_SET*を1℃単位に丸め、それに該当する平均温冷感申告値と比較した。SOL_SET*と被験者の平均温冷感申告値との回帰決定係数は0.86となり、高い相関が見られた。SOL_SET*及び入力パラメータとしてのSOL_MRTは、被験者の温熱環境を表すうえで有効な指標であるといえる。さらに、非適温かつ不快または非受容の申告率とSOL_SET*を対応させることで、熱的快適域と熱的受容域を導いた。非適温かつ不快の申告率は20%未満となることは無く対象空間での被験者実験では高い不快の申告率を示した。また熱的受容域となったのは26℃から30℃の範囲であった。 SOL_MRTの測定には時間と手間を要し、広い空間を同時に評価するには適さない。そこでSOL_MRTの簡易予測式を提案し、日射が均等に拡散するような緑陰内、人工物である屋外カフェテラスの日向となる軒先、日陰となる軒下で実測に基づいた検証を行った。実測値と予測値の比較から、強い直達日射の入り込みやすい環境では誤差が大きくなることが確認された。そのため緑陰のように均一に囲われた空間では一定の精度が見られたものの、不均一な人工環境である屋外カフェテラスでは精度が低いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半屋外環境では日射環境が熱的快適性に大きな影響を与える。そのため、日射を含んだ放射環境の評価が熱的快適性評価の要となるが、これまで室内環境測定基準ISO 7726のような基準は整理されていない。そこで、本年度は6方向の短波長及び長波長放射の測定結果から人体形状を考慮したSOL_MRTを求める手法を提案した。また、その結果を用いて求めたSOL_SET*が被験者の熱的快適性と高い相関があることを確認した。しかし、1点における測定に最低12分を要し、多点の計測には適さないことが課題となった。放射環境は同じエリア内でも場所によって大きく異なり、多点の計測にはより簡便な方法が求められる。そこで、滞在位置から見た周囲面(樹木等含む)の形態係数や日射遮蔽率を正射影レンズを用いた上方撮影により評価し、温湿度及び水平面全天日射の測定結果から簡易的にSOL_MRTを求める方法を考案した。樹木に覆われた並木道及び建築物周辺における測定結果から、詳細法と簡易法の精度比較を行った。簡易法では、直達日射の当たる場合に精度が落ちるものの、それ以外の条件では一定の精度が得られることが確認できた。ケースに応じて詳細法と簡易法を分けて使う必要があるが、日射のある放射環境を適切に評価できるようになったことで、今後様々な半屋外環境の評価が可能になったと言える。今後、これらの環境測定結果と利用者の熱的快適性申告を対応させることで、熱的快適域の調査が可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
環境適応に関する調査はその性質上、執務者・滞在者にとって日常に近い環境にてフィールド調査を行う必要があり、且つデータ数も多い方が有効な結果を抽出できると考えられる。①行動観察、②アンケートによる心理量調査、③温熱環境測定という3つの手法を組み合わせた実測調査を実施する。 ①行動観察: 対象空間内で実際に座った人を滞在者とし、滞在時間および滞在者数を調査する。滞在時間は調査地を見渡せる位置から無作為に滞在者を選び、着席・離席時刻を記録する。また、滞在者数を10分毎に記録し、1日の変動を調査する。 ②心理量調査: 滞在者にiPadを用いた熱的快適性アンケートを依頼する。様々な人から回答を得るために質問には平易な表現を用い、答えやすいインターフェースを工夫する。 ③環境調査: 滞在者周辺の物理環境を、なるべく滞在者の近傍で時間のずれを少なくして測定する。空気温度及び気流速度、相対湿度、放射計を同時に10秒間隔で記録させる。 本年度は温熱環境を形成している要因の分析を目的とした測定の比重を高め、特に気流環境に着目する。温湿度に比べて放射と気流は平面的な分布が生じやすく、同じ時間でも場所により特性が大きく異なる。行動観察により滞在者に選択されやすい場所を特定し、その放射・気流環境の特徴を抽出する。放射については6方向の長短波放射を測定すると共に、滞在位置から見た周囲面(樹木等含む)の形態係数や日射遮蔽率を正射影レンズを用いた撮影により評価する。また、気流環境については好まれやすい気流変動の周波数特性を分析する。平均値では語れない、半屋外環境で好まれる環境特性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3次元超音波風向風速計の購入にあたり、当初想定してた測定器よりも高機能な機種が判明したため、そちらを購入した。効率的な測定が行えるセンサー固定用のアタッチメントも購入の予定であったが、測定器本体価格の上昇により残金が不足した。アタッチメント購入を次年度に見送ったため、1,919円の残金が発生した。 平成26年度は、3次元超音波風向風速計を用いた調査を行う。屋外に持ち出して測定するため、付属しているセンサー固定のための室内用アタッチメントでは適さない。屋外用アタッチメントに加工するための部材購入の一部とする計画である。
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