2013 Fiscal Year Research-status Report
イタリアにおける地理的領域と生産拠点に関する都市史的比較研究
Project/Area Number |
25820307
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤松 加寿江 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (10532872)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イタリア / 丘陵地 / アゾロ / 生産拠点 |
Research Abstract |
平成25年度はヴェネト地方北部の丘陵都市アゾロを対象に調査研究を実施した。地図、古絵図から地形構造を理解した上で、現地において都市形状の測量、街区調査、建築実測、聞き取りから都市における居住の空間構造を把握した。都市部だけではなく丘陵麓のパニャーノにある地域の産業拠点となっていた水車小屋(15世紀建造)の実測を行ったほか、アゾロ古文書館にて文献史料調査を実施した。これらの調査は丘陵地における物理的な空間および社会的構造を解明し、人間居住の多様な様態を歴史的に解明する点で大きな意義を有している。 今回の調査によって古代ローマ期に建設された都市軸、水道が基本的な空間構造を規定しながら、中世期に住宅建設が展開されてきたこと、ベルガモからの移民集団が市壁外ボルゴに居住区を形成し、徐々に都市エリート層化していく過程等が空間的にも明らかとなった。さらに同移民集団による羊毛産業が地域の主要産業となり、水車による動力も縮絨のために機能していたことが明らかになり、水車というインフラを備えた生産拠点としての役割と拡がりが明らかになった。なかでも、水車の利用が縮絨から再び製鉄に転換した時期は、地域産業における羊毛産業の衰退と一致していると考えられ、その一方で農業生産が徐々に広がっていたことなどから、地域産業の変容と土地利用、居住の社会的空間的構造が変容していった歴史的展開を明らかにすることができた。 以上のように丘陵地アゾロを市壁に囲まれた丘陵都市として捉えるのではなく、周辺農村部と生産・産業を通じて社会的、空間的に連携しながら地域を形成している様態を概観することができた。このことは、イタリアにおける都市と農村の在り方を領域的視点で捉え、生産拠点と居住のひとつの類型として位置づけることができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アゾロを対象とした調査は、生産拠点となる水車の調査を達成でき、領域的な産業の変容についても理解できた点で、極めて充実した調査として順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
不十分な調査を複数都市実施することよりも、空間実測と史料調査に深度のある調査を行うことが重要であると考えることから、本年度は予定していたヴェネト地方北部の高地に位置する都市ベッルーノへの訪問を実施せず、丘陵地アゾロに集中して詳細な調査を実施した。平成26年度にベッルーノ調査も予定しているが、状況によっては各年度複数都市ではなく1つの都市を重点的に調査することも踏まえて調査を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はアゾロ調査に関わる旅費費用を他の費用でまかなうことができたため、旅費予算を来年度に繰越した。平成26年度は25年度の未調査都市ベッルーノと26年度に予定していた2都市、合計3都市の現地調査を予定している。 平成25年度分からの繰越金額を使用して平成25年度予定していた都市ベッルーノへの現地調査を実施する。 平成26年度分予算は、予定通りの調査計画の為に使用する。
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