2014 Fiscal Year Research-status Report
イタリアにおける地理的領域と生産拠点に関する都市史的比較研究
Project/Area Number |
25820307
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤松 加寿江 京都工芸繊維大学, その他部局等, 講師 (10532872)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生産拠点 / 丘陵 / アゾロ / ソアヴェ / ベッルーノ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は調査計画の順序を入換え、25年度から継続するヴェネトの調査を優先させ、①高地ベッルーノ、②平野(低)カンポ・サンピエロ、③平野(高)のソアヴェ(ペスキエラの代替地)の三都市の調査研究を実施した。 ①ベッルーノでは都市内の連続平面・立面の実測資料、古文書館では中世の都市有力者に関する史料および都市条例を入手した。市壁内部には泉とポルティコが特徴的で、建築には大理石が数多く使用されていた。ヴェネツィアから遠く離れた都市でありながらも、ピアヴェ川を利用することによって活発な流通拠点であったことが確認できたが、生産拠点としての位置づけは困難であることが判明した。 ②カンポ・サンピエロは戦後多くの史料、歴史的痕跡が失われており史料収集、実測を遂行することができなかった。 ③ソアヴェでは農村部古絵図、地図および建築・都市に関する基礎史料を地元建築家およびワイン組合、ソアヴェ市の協力により網羅的に収集することができた。都市中心部においてはピエロパン、カンティーナ・デル・カステッロの地下貯蔵庫の見学および実測図を収集した。都市周辺の生産拠点においては14世紀に遡る建築の実測調査を行った。 当該都市の生産拠点は小規模零細な土地所有が多数であることを背景に、ワインを共同加工する組合が展開し、現在に至る社会構図を形成していることが確認できた。都市および周辺部の空間と社会の関係構造は、土地所有と加工生産の関係性によって類型分析が可能である。都市内部は河川変更や地盤面の変更など近代に大きく改造はされているものの、幾つかの中近世のパラッツォが近代以降のワイン生産を空間的に受け止めていることが確認された。 以上のようにソアヴェの調査は、本研究が目的としている周辺農村部と生産、産業を通じて社会的、空間的に都市と周辺部が連携しながら地域を形成している具体相に踏み込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的に調査を進める為に調査都市の順序を入れ替えたが、ヴェネトにおいては予定していた都市調査を進めることができている。カンポサンピエロのように史料と空間痕跡の不足から調査ができなかった都市もあるが、ソアヴェとアゾロのように、調査都市できた都市においては予想以上の成果があげられている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヴェネトを優先させる調査都市の順を入れ替えたことで、アゾロやソアヴェにおいて十分な都市調査を深化させることができているが、低地のカンポ・サンピエロでは史料・空間的調査が不可能であった。立地条件が対応する都市同士を、ヴェネトとトスカーナで比較することを目的としている本研究では、一地方で調査不可能であった場合には比較ができないため、他方の都市でも調査を実行しない。したがって、トスカーナの低地都市であるエンポリの調査は実行しないものとする。対象都市は数が多ければよいというわけではなく、ソアヴェやアゾロでは深度の深い調査を進めることができており、研究調査に問題はない。
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Causes of Carryover |
本年度はソアヴェ、ベッルーノ、カンポサンピエロの旅費を、他予算で執行されるプロジェクトと平行して実行することができたため、旅費予算を来年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度はポルトトッレ、マッサ・マリッティマ、カルミニャーノの3都市について、2015年9月、2016年3月の2度にわけての調査を予定している。
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Research Products
(1 results)