2014 Fiscal Year Research-status Report
明治~大正中期における地方営繕組織の成立と展開に関する基礎的研究
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25820312
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
崎山 俊雄 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (50381330)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 営繕組織 / 成立過程 / 建築技術者 / 地方制度 / 明治前半期 / 職員履歴 / 人材移動 / キャリア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治~大正中期における府県(市)の営繕組織について、主として各府県立図書館/文書館に現存する行政文書や職員録等の収集と分析を主として時系列的かつ網羅的に把握し、背景としての地方行財政制度や建築教育制度をも含む総合的な視点から、それらの成立と展開の過程を解明しようとするものである。特に平成26年度には、①東日本地域の各府県に関する史料の追加調査と収集、②西日本地域の各府県に関する史料存否の基礎調査と収集、に重点を置いて実施した。研究成果は以下の2点に要約される。 1)東日本地域での調査を主とした25年度の成果により、①府県において明治初期に土木・建築事業を管掌したのは過半の事例で「租税課」であったこと、および②明治10年代以降、地方行財政制度の再編過程の中で各府県が「土木課」を設置しはじめたこと、の2点について仮説的に展望したが、西日本地域に関する26年度の調査により、このような状況が全国的な趨勢であったことを解明した。 2)特に人材移動と技術交流の観点から、履歴史料の充実する秋田県を中心に、営繕掛在籍者の経歴を可能な限り収集し分析した。その結果、明治前半期の秋田県営繕組織は県内出身者が構成員の6割程度を占め、彼らはまた他県出身者に比して在任期間の長かったことを確認した。一方、4割程度を占めた他県出身者について注目されたのは、山口県や福岡県など遠方出身者が含まれ、彼らが知事との関係で来県した可能性の高いことが示唆された点であった。この点は秋田県からの転出者を見ても示唆され、知事の転出に伴い同地に転出する官員の少なくないことが確認された。技術官の採用基準が制度化される以前、全国を舞台にこうした人材の移動が生じていた点は極めて示唆的と捉えられた。なお、この時期の秋田県営繕事業の担当者について見れば、事業を通して種々の経歴を有する者の技術的交流もあったことが窺われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)当初の計画に沿って、第二年度までに全国の史料存否概要を概ね把握し、且つこれらの収集も一定程度に進んだ。結果的に、当初の研究目的に対して歴史的事実を踏まえていくつかの仮説を見出し、あるいはそれを確認することが出来た。 2)一部の府県に関しては、基礎調査の過程で予想を上回る史料を発見することができた。 3)上記した当初予想を上回る資料の豊富さにより、網羅的な収集の点では結果的に若干の遅れがある。しかしながら、研究成果に照らして見れば寧ろ望ましい状況と言え、かつ、少なくとも次年度に収集すべき史料はリストアップすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、今後は以下に重点をおいて史料の収集と分析を進める計画である。 1)未収集データの継続的収集:未収集史料のうち、特に営繕事業に関する史料が充実し、精査することで確実な成果に繋がると考えられる群馬県、埼玉県、長野県、京都府、奈良県、山口県については継続的に資料収集に努める(国立国会図書館所蔵資料等でも補完する)。特に明治~大正前半期の主要営繕事業の担当者の経歴と建築の実態との相関関係について解明することが目標である。 2)都道府県の機構に関して全国の史料が現存する国立公文書館・国立国会図書館での史料収集を継続し、特に明治中期以降の技術者陣容と経歴の把握に努める。人材移動や学歴の観点から実態を解明することが目標である。 3)以上の成果にもとづき、明治~大正中期の地方営繕組織の成立と展開の過程に関して総合的な観点から考察を深め、実態を解明することが最終的な目標である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の勤務地近傍(東日本)における現存史料が申請時の予想を上回って充実していたことにより、西日本で予定していた調査の一部を東日本での調査に振り替えた。そのため、当初の計画に対して旅費の実支出額が減少した。なお、西日本地域における調査については、東日本地域での調査により導き出された仮説にもとづいて効率的に調査を実施することが出来ており、研究の進捗状況に関しては概ね順調と言える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度までに未完了の西日本地域での資料収集、および研究目的に照らして重点的に追加収集すべきと判断している東日本地域での資料収集をそれぞれ翌年度において実施する計画であり、次年度使用額は、これらの調査旅費として支出することを計画している。翌年度は最終年度となるが、これらの調査は翌年度中に計画的に実施することが可能である。
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Research Products
(1 results)