2014 Fiscal Year Research-status Report
スペインを中心とした20世紀近代建築における修復技術知識の活用に関する研究
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25820313
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
熊谷 亮平 東京理科大学, 工学部, 講師 (20548391)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モデルニスモ / ヴォールト / 改修手法 / 近代建築 / 構法 / 修復 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は(1)スペインにおける近代建築の修復技術およびその構法に関する調査、(2)スペインの近代レンガ造構法(カタルーニャ・ヴォールト)の実大モデル制作実験、(3)日本における近代建築修復事例に関する調査を行った。 (1)バルセロナとマドリッドの近代建築を対象に、スペイン近代建築の特徴であるレンガを用いた近代建築の修復と構法に焦点を当て調査を行った。19世紀後半以降のモデルニスモ建築、20世紀前半のモダンムーブメントの代表的事例の中で、主に保存再生により現在活用されている建物など物的特徴を把握可能な建物を対象とした。現地目視調査、文献調査および対象建物の修復設計者へのヒアリング調査を行った。対象事例は、カフェ・レストラン、タピエス美術館、カイシャ・フォーラム、カサ・ブロック、ラ・リカルダ、カサ・デ・ラス・フローレスなどである。タピエス美術館については、現況の意匠・構法を確認し、改修前の状態や改修方法が分かる文献資料を収集した。カフェ・レストランでは寸法やディテールなど図面補足情報の把握を行った。カサ・ブロックについては、各部位の構法について、また集合住宅の改修工事特有の施工方法、現代の住宅性能と保存との問題を把握した。 (2)スペインのカタルーニャ地域の伝統的在来構法であるカタルーニャ・ヴォールト技術を用いたレンガ造階段ヴォールトを実際に製作し、その施工性や曲面形態の決定方法に関する工学的知見を得た。 (3)日本における近代建築修復事例の詳細なケーススタディとして、現在継続的に保存改修工事が進められている建築家天野太郎設計による嵐山カントリークラブを対象として、その保存改修工事の特徴と課題を整理した。竣工後の度重なる改築による変更箇所について、創建時の意匠を復原しながら、今日の運営や現代的性能に配慮した耐震補強やインテリアの改修について記録・整理分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スペイン現地調査を行うことが可能な日程が、通常勤務のない夏季休暇期間に限られているが、8月は現地ではアーカイブなどの公的機関やヒアリング先が休暇期間にあたり、当初予定よりも調査遂行が難しい状況であった。また短期間の滞在において効率的にヒアリング調査のアポイントメントをとることは難しいという日程上の課題もあった。一方で、研究対象となる事例をスペインの近代レンガ建築に絞ったことにより、テーマが明確になり、現地事例調査を行いやすくなったと共に、最終年度に向けて研究の成果をまとめやすくなった。日本のケーススタディを本年度行ったことは、国内の調査研究部分について当初予定通り進められた部分である。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査を行う上での制約条件を考慮して、調査方法を工夫して行う。具体的には、今年度の調査によりテーマが絞られたため、より近代建築におけるレンガ表現と構法を現地で確認する調査方法を主として行うなどが考えられる。また国内の事例研究から体系的に修復手法を整理することが研究において必要であるが、修復事例や技術に関する情報は散逸しており、また個別の情報は限定されていることが多い。事例情報を効果的に絞りながら技術情報としての深さを有する必要があるため、すでに公刊されている改修工事報告書に資料を限定し、それらをウェブ上に修復技術ライブラリーとして構築していく方法を採用する。またこれらを最終年度に行うため、所属大学の研究室学生の研究協力が得られるよう、研究内容や研究補助に関わる作業謝金のしくみを効果的に活用する。
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Causes of Carryover |
本年度の科研費の支出については、所属機関の研究助成を受けたため、支出の一部(文献資料代等)を節約し、一部を次年度に繰り越した。また、最終年度となる平成27年度も海外現地調査が必要であるが、当初予算計画では少なめに見積もっていたため、海外調査旅費が不足する懸念があった。そのため、必要額の一部を次年度予算に充当することが適当であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度である平成27年度予算において、当初予算計画では少なめに見積もっていた海外調査旅費予算に一部として使用を予定する。また、最終年度は日本の修復事例のライブラリー構築作業を予定しており、そのための作業謝金の一部としての使用を計画している。
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