2014 Fiscal Year Research-status Report
TEM内超微小硬さ試験によるIII族窒化物薄膜材料の機械特性値その場ナノ計測
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25820320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徳本 有紀 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (20546866)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 窒化物半導体薄膜 / 超微小硬さ試験 / 転位 / ひずみ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度に、ひずみの異なる窒化アルミニウム薄膜、窒化アルミニウムガリウム薄膜では硬度に差があることがわかっていた。この原因を解明するために、平成26年度は膜厚増加に伴うひずみ緩和をさせた窒化アルミニウム薄膜試料を用い、超微小硬さ試験を行った。その結果、同一組成で膜厚が薄くひずみの異なる薄膜試料について、弾性率は大きな変化は見られなかったが、ひずみが大きい薄膜試料の方が硬度が高かった。一方、膜厚が厚く、結晶性(X線回折ロッキングカーブ半値幅)の異なる薄膜試料については硬度の差は小さかった。これらの結果より、薄膜の硬度には結晶性よりひずみの方が大きく影響することが示唆された。 また、窒化インジウムは高品質結晶の成長が容易でないことから、基礎的な機械的特性値がまだ明らかになっていない。さらに、窒化インジウムは極性により薄膜作製時の不純物取り込み量が異なることが知られているので、膜厚が異なる数種類のIn極性およびN極性の窒化インジウム試料を用い、超微小硬さ試験を行い、硬度およびヤング率に対する極性(不純物濃度)の影響を検討した。超微小硬さ試験を行う前の光学顕微鏡観察の結果、In極性試料の方が表面が平坦であることが確認された。X線逆格子マッピングの結果からは、結晶性はGa極性試料の方が良好であること、膜厚が大きくなるほど窒化インジウム層のひずみが低減することがわかった。超微小硬さ試験の結果、極性の違いは硬度やヤング率の絶対値にはほとんど影響しないが、ばらつきには大きく影響を与えることがわかった。また、ひずみや結晶性よりも表面の平坦性による影響の方が大きいことがわかった。以上の結果を踏まえ、表面平坦なIn極性で膜厚が厚い試料の硬度およびヤング率の値が最も信頼度が高いと判断し、窒化インジウムの硬度とヤング率をそれぞれ8.6GPa、176GPaと求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に予定していた透過型電子顕微鏡(TEM)外超微小硬さ試験については、膜厚増加に伴うひずみ緩和をさせた試料を用いた超微小硬さ試験を行うことにより、ひずみと硬度の相関を検討することができた。さらに、極性(不純物濃度)の異なる窒化インジウム薄膜試料を用い、TEM外超微小硬さ試験を行い、機械的特性値(硬度・弾性率)に対する極性(不純物濃度)の影響についても検討することができた。TEM外超微小硬さ試験については概ね良好に進展している。 一方、TEM内での超微小硬さ試験については取り組む時間が不足し、試料セット方法改善、最適圧子選択が計画していた通りに進展せず、機械的特性値その場ナノ計測法の確立には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
TEM内超微小硬さ試験については、引き続き試料ホルダーメーカーの技術職員と相談し、改善策を検討していく予定である。 また、面方位の異なる窒化ガリウムウェハ試料を用いて、TEM外超微小硬さ試験による機械的特性値の測定とTEM内超微小硬さ試験による転位の発生・伝播挙動の解明を併せて行い、面方位の影響について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
長期休業を取得したため、実験の進展が遅れ、それに伴い、消耗品の使用が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
窒化物半導体薄膜、ウェハ試料、TEM試料作製、観察用のホルダーやジグ、試料保管容器等の消耗品費、および、研究の打合せ、成果発表のための旅費として使用する予定である。
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