2013 Fiscal Year Research-status Report
界面原子構造を考慮した合金の熱力学的安定性解明の為の理論計算手法の確立
Project/Area Number |
25820323
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
弓削 是貴 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70512862)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 合金界面 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
本研究では,第一原理計算に立脚して合金の界面,特に異種構造間の複雑な界面を陽に含むnm~μmスケールの系の熱力学的安定性や界面偏析挙動をmeV/atomオーダーで高精度に予測できる理論計算手法の開発と応用を目指すものである.その中で,平成25年度の実施計画では「界面を含む系のエンタルピーを取り扱う理論手法の開発とプログラムの作成」,「モデル系でのテスト計算と実際の合金系への応用」を中心に行った.具体的には,母相からの析出過程で考慮すべき,原子配置や内部座標,歪などに依存した二元系のエンタルピーを記述可能なハミルトニアンの開発に成功した.歪の寄与は通常のイジングモデルにおけるスピン変数を連続値に拡張し,その基底関数と原子配置に関する基底関数をカップリングさせることでハミルトニアンを構築する.また,内部座標に関しては空間を適当なメッシュに分割し,そのメッシュ上で仮想空孔を含めた仮想的な3元系の配置の基底関数を用いることで,第一原理計算の精度を殆ど損なうことなく,複雑な変位を伴う系のポテンシャルエネルギーサーフェスを予測することに成功した.これらの手法に関するプログラムをc++言語を用いて作成し,第一原理と組み合わせて現実の系(Cu-Ti2元合金,Cu-Rh二元合金)に適用し,相互作用を求めるのに用いていない未知の構造も含め,高い精度でエンタルピーを予測できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,合金の析出相と異種構造界面の熱力学的安定性解明の為に,「界面を含む系のエンタルピーを取り扱う理論手法の開発とプログラムの作成」,「モデル系でのテスト計算と実際の合金系への応用」を行う予定であった.これに対し,平成25年度は歪や原子配置,原子緩和の効果を考慮した界面を含む系のエンタルピーを精確に記述できる手法を開発し,そのプログラムの作成を行った.また,現実の系への適用としてCu-Ti, Cu-Rh2元系合金の歪や原子変位を陽に考慮した場合の系のエンタルピーを新規手法で計算し,第一原理の精度を殆ど損なうことなく予測可能であることを確認した.そのため,当初の研究計画に沿っておおむね順調に進展している.一方で,原子変位を考慮した場合の計算は現在規則・不規則構造に適用可能であることを確認しているが,析出核を含む系の計算は行っておらず,平成26年度に実施の予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度で開発した理論手法を発展させる.まず,「静的」に安定な界面への添加元素の偏析や母相・析出相への固溶の効果を,界面構造をバックグラウンドとする二元系のハミルトニアンを構築するというアイデアに基づいて取り入れる.また,添加元素濃度の希薄極限において,摂動を用いて効率的に扱える手法の開発を並行して行う.次に,「動的」な界面への偏析を,既に開発した二元系のハミルトニアンを一般化し,多元系に拡張することで取り扱う.この手法を第一原理と組み合わせ,界面に偏析が確認されているFe-Cu合金にNiを添加した系の界面構造と偏析挙動を静的・動的な界面について定量的に評価するとともに,他の系や添加元素についても計算し,析出相や界面の構造と添加元素の関係を系統的に整理する. さらに,界面凝集エネルギーを界面を含む系の原子配置・組成・原子変位などの関数として表現できるハミルトニアンを,上記で開発した手法を基に構築する.これにより,例えば熱力学的安定性と高い凝集エネルギーの双方を有する一連の界面構造を系統的に予測する手法を開発し,現実の系への応用を通してその有用性を確かめる.
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