2013 Fiscal Year Research-status Report
大容量キャパシタに向けたリチウムイオン伝導体/誘電体ナノコンポジット材料の創製
Project/Area Number |
25820332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
寺西 貴志 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90598690)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高速Liイオン伝導体 / LLTO / 大容量キャパシタ / 誘電体 / ゾルゲル法 |
Research Abstract |
平成25年度は,大容量固体キャパシタの基盤材料に向けてリチウムイオン伝導体と誘電体のナノコンポジット材料を作製し,コンポジット界面において発現する分極により巨大誘電率を実現させることを目的として研究を行った. 当初検討したコンポジット構造は,高速Liイオン伝導体のナノ粒子(コア層)に,液相反応により絶縁性の高い誘電体ナノ粒子をシェル(外殻)として被覆した構造とした.コア内部では,正電荷を持つLiイオンは外部電場により高速移動するが,コア・シェル界面においてLiイオンがブロックされることで巨大界面分極が誘起されると考えた.具体的には,コア粒子の材料として高速Liイオン伝導能を有するチタン酸リチウムランタン(Li0.33La0.55TiO3, LLTO)を,シェル層にはLLTOと同じペロブスカイト型構造を持ち化学的に安定,かつ誘電損失の低いチタン酸ストロンチウム(SrTiO3, ST)を選択し,ナノコンポジット体の作製を試みた.LLTO粒子は既存のゾルゲル法により合成を行った.得られたLLTOナノ粒子を溶媒中で分散させ,シェル層であるSTをゾルゲル反応により被覆した.Ti源およびSr源として,Tiアルコキシドと硝酸ストロンチウムをそれぞれ用いた. 得られたコンポジット粉末を成形後,800℃においてアニールすることでセラミックスを作製した.得られたLLTO-STコンポジットセラミックスについて電気測定を行ったところ,巨大な誘電分極を確認することができず,当初狙いとしたコンポジット界面での巨大分極機構が発現していないものと推察した.巨大誘電分極が得られなかった要因として,液相反応によるST粒子のLLTO上への被覆において十分高い被覆率が得られていないことが考えられる.そこで,現在はLLTOとSTを液相反応を用いて2次元上に積層膜化させることで,再度巨大誘電分極の発現を試みている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては平成25年度中に,LLTOとSTのナノコンポジットセラミックスを作製し,巨大誘電分極を発現させることを目的としていた.まずコア材料であるLLTOのナノ粒子についてはゾルゲル法により単相粒子を得ることができた.続いて,絶縁体であるSTをLLTO粒子の表面上に液相反応により担持させたコンポジット粒子を作製した.しかしながら,得られたコンポジット粒子から得たセラミックスでは所望の巨大誘電分極を観測することができなかった.巨大誘電分極が得られなかった要因として,液相反応によるST粒子のLLTO上への被覆において十分高い被覆率が得られていないこと考えられる.また,コンポジットセラミックスにおいて巨大誘電分極が得られていないため,広帯域誘電スペクトル法を用いた分極種の解析にも未着手である. 以上から,平成25年度における当初の目標に対しては,研究の進捗状況はやや遅れていると判断した.現在,LLTOとSTの交互積層膜を合成し,巨大分極が発現するための条件最適化検討を行っているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,LLTO-STコンポジット交互積層膜の作製を行っているところである.積層膜はゾルゲル反応を用いたスピンコーティング法により合成を行っている.今後,得られた膜の誘電特性評価を行い,巨大誘電率の発現の有無を確認する.巨大誘電率を実現できれば,分極種の定量的な解析を行う.これまでに我々は広帯域誘電スペクトル法により,低周波から光領域までの複素誘電率を連続的に評価する技術を確立している.本研究で狙いとするコア・シェル界面での分極は,外部電場による高速移動するLiイオンに起因するため,MHz~GHzの非常に高い緩和周波数を持つと予想している.広帯域誘電スペクトル法により,コア・シェル界面における分極種の誘電率への寄与を明らかにすることで,得られた巨大誘電率がコア・シェル界面で誘起された分極に由来するものかどうかの判断を行う. さらに,LLTO層およびST層の膜厚や積層数を変更しながら,誘電特性評価を行い,その都度,広帯域誘電スペクトル法によりコア-シェル界面での分極を定量的に調べる.高誘電率・低誘電損失かつ高い緩和周波数が実現するような成膜条件の最適化を行う. また,我々はこれまで,LLTOのAサイトにNdやBaなどのカチオンを少量置換添加したバルク試料において,無添加LLTOに比べてLiイオン導電率を改善することができている.組成はやや複雑にはなるが,現在検討中のコア・シェル積層膜において巨大容量が得られれば,コア材料を上述のより高い導電率を有する組成に置き換えることで,さらなる誘電率の増大を図る.最終的に,リーク電流測定による耐電圧評価や,容量密度の計算を行い,現行の強誘電体系セラミックスコンデンサに対して,どの程度容量密度が改善できたかを判断する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に購入した備品類(小型環境試験器など)が当初予定よりも低価格で購入することができたため. 次年度の研究計画において予定している実験で,電気測定用校正基板や高純度試薬などの購入を予定している.
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