2013 Fiscal Year Research-status Report
長尺高温超伝導線材の高性能化と安定製造に向けた材料設計
Project/Area Number |
25820335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
春田 正和 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助手 (90580605)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高温超伝導薄膜 / 臨界電流特性 / ナノロッド / 薄膜電池 |
Research Abstract |
長尺の高温超伝導線材において、高い磁場中電流輸送能力を均一に実現するための技術開発を行った。希土類系高温超伝導体(REBa2Cu3Oy, RE123)内に、第二相物質としてBa-Nb-O、BaZrO3、BaSnO3のナノロッドを導入し、臨界電流密度を向上させた。既報のように、これらナノロッドを導入したRE123薄膜の臨界電流特性は、成膜温度に大きく依存している。臨界電流特性の成膜温度依存性を理解するため、上記ナノロッドを導入したY123薄膜を広い成膜温度範囲で作製した。一見ナノロッド材料によって、成膜温度依存性が異なっているように見えるが、広い温度範囲では、ある成膜温度で臨界電流密度にピークを持つような振る舞いをした。臨界電流密度が最大になる成膜温度は、ナノロッド材料によって異なっていた。また、ナノロッドの導入においては臨界温度(Tc)の低下が問題である。この問題に対して、RE/Ca置換によってTcの改善を図った。Ca置換により、大きなTcの改善には至らなかったが、ナノロッド導入によるTcの低下を抑えることができた。 高温超伝導薄膜の作製で培った界面構造の制御技術を、薄膜型のリチウムイオン二次電池に展開し、薄膜型全固体電池の高性能化を目指した。全固体電池は優れた特性を有しているにもかかわらず、電解質と電極界面における高い界面抵抗に起因して、充分な性能を発揮できていない。さらに、電池性能を決定づける電解質/電極界面におけるイオン伝導機構が理解さていない現状がある。そこで、これまでの薄膜組織の制御技術を用いて、イオン伝導機構解明のための理想的な電解質/電極界面を有する薄膜型の全固体電池の作製に取り組んだ。すべての作製プロセスを超高真空中にて行い、一度も大気に触れることなく清浄な界面を有する薄膜電池を作製した。これにより、アニール処理なしで安定動作する薄膜電池の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は25年度においてDy123薄膜にナノロッドを導入する予定であったが、Y123薄膜においてBa-Nb-O、BaZrO3、BaSnO3のナノロッドを導入し、広い成膜温度範囲で臨界電流特性の振舞いを明らかにした。また、RE/Ca置換(キャリア制御)によるTcの改善にも先行して取り組んだ。Tcの改善には至らなかったものの、ナノロッド導入によるTcの減少を抑えることができ、さらなるTcの改善に期待が持てる。 これまでの薄膜作製・界面制御技術を薄膜電池の分野に応用し、安定的に動作する薄膜電池の作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
26年、27年度では当初の予定に変更を加える。これまでの技術を薄膜電池の分野に応用したところ、予想以上に技術のマッチングがよく、研究が進展したためである。25年度において、安定動作する薄膜電池の作製はできたものの、現時点では素子の成功確率が低い。そこで、作製条件の最適化、およびマスクパターンの検討により、安定的に歩留まり良く電池素子を作製できるようにする。安定的に作製できるようになったら、以下の点に着目して評価を行う。①清浄界面を有する理想的な電池における界面抵抗。②電解質を変更した場合、および電解質/電極界面に別の物質をバッファー層として挿入した場合の界面抵抗。③電極活物質として用いるLiCoO2の配向方位や、粒界密度を変えた場合の界面抵抗。以上のように、様々なケースにおいて界面抵抗に着目して評価を行い、電解質/電極界面におけるイオン伝導機構を明らかにすることを目指す。
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