Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,インプラント材料として,どのような表面電荷量・表面エネルギーの大きさを持つチタン表面が骨の形成を促進あるいは抑制するのかを明らかにすることを目標としている.本年度は,昨年度に引き続き,チタンの表面特性と骨形成能との相関を調査するために,チタン表面を異なる化学官能基により修飾し,異なる表面エネルギーおよび表面電荷を有するチタン表面を作製した.化学官能基としては,メチル基,アミノ基,チオール基を用いた.超音波洗浄を行ったチタン(Ti),ピラニア溶液により親水化したチタン(Ti-OH),アミノ基修飾チタン(Ti-NH2),チオール基修飾チタン(Ti-SH),メチル基修飾チタン(Ti-CH3)の水の水滴接触角はそれぞれ約53,28,42,69,100°であり,Ti-OH<Ti-NH2<Ti<Ti-SH<Ti-CH3となった.さらに,水,ヘキサデカンおよびジヨードメタンの水滴接触角から算出した表面エネルギーは,それぞれ約72,102,74,83,35mJ/m2となり,Ti-OH>Ti-NH2>Ti-SH>Ti>Ti-CH3であった.チタン表面をメチル基,アミノ基,チオール基で修飾することで表面エネルギーを約35~102mJ/m2の範囲で変化させられることがわかった.各官能基で修飾したチタンを36.5℃の擬似体液中に3週間浸漬させ,ハイドロキシアパタイト(HAp)の析出挙動を調査した.3週間浸漬した時点では,各官能基で修飾したチタン表面に析出物は見られなかったが,XPSによる測定から試料表面にCaが存在することがわかった.各官能基で修飾したチタンにおけるCa2pのXPSスペクトルのピーク面積より推定されるCaの吸着量は,Ti>Ti-OH>Ti-NH2>Ti-CH3>Ti-SHとなった.本結果と水滴接触角および表面エネルギーとの相関については現在検討中である.
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