2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25820353
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
赤丸 悟士 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 助教 (10420324)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水素センサ / 磁性 / Pd合金 |
Research Abstract |
最初に水素ガスセンサの検出素子となるPdCo合金の水素吸収に伴う磁化率変化を検討した。検討したCo濃度10%以下の合金では、磁化率は水素吸収に伴い単調減少した。特に水素平衡圧10kPa以下のいわゆる溶解領域では、磁化率は気相の水素濃度の1/2乗と比例関係にあり、センサとして適した傾向が得られた。この溶解領域での比例関係より各試料においてその比例係数を求めると、Co濃度10%の試料が最も大きい値を示し、つまりこの組成の合金を用いることで低い水素濃度を精度よく検出可能であると期待された。以上より、PdCo合金ではCo濃度10%程度がセンサ素子として適していると判断した。この知見を元にして、センサ素子としてCo濃度9%のPdCo合金薄膜を調製し、それを用いてセンサ特性を検証した。任意の混合ガスを流通させる石英管の中にPdCo合金薄膜を設置し、石英管の外側から交流磁化率測定用の検出コイルを巻くことで混合ガス導入時の磁化率変化をリアルタイムで測定できる装置を用いた。窒素と水素の混合ガスを用いた場合、水素を導入すると磁化率が減少し、その減少の大きさは水素濃度の1/2乗に比例した。この変化の大きさと繰り返し測定より得られた測定誤差との比較により、本測定による水素濃度の検出下限は0.1%以下であることが知られた。また、水素吸収と放出過程での違い、応答速度などを検討した結果、既存のPd薄膜抵抗式のセンサと比較して、応答時間が非常に劣っていた。更に空気と水素の混合ガスを用いた場合では、測定の下限が0.5%程度となり、また窒素ガスの場合と比べ磁化率減少率が縮小した。これは、Pd合金表面での水生成反応により、(1)試料自身の温度が局所的に上昇した、(2)試料に吸収される水素が減少した、ことが主な原因であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度中にPdCo水素化物の磁気特性の評価及び適した組成のPdCo合金薄膜を使った磁気応答型水素ガスセンサの基本特性の評価が一通り終了した。得られた実験結果を解析することで、既存のセンサとの比較による、磁気応答型水素ガスセンサの位置付け及び改善点も明確に示すことができた。以上より、当初の研究実施計画のうち、25年度実施予定の内容はほぼ実施できており、また26年度の実施予定であった素子の薄膜化に関しても着手することができている。以上より本研究課題は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究が想定通りに進んでおり、引き続き当初の研究計画に則り以下の研究課題について推進する。一つは最適素子の探索として、PdCo以外の合金について、その水素化物の磁気特性を把握することでセンサ素子としての可能性を検討する。具体的には、Pd-Fe、Pd-Ni合金について詳細な検討を行う予定であり、その他のPd合金に関しても可能な限り検討を行う。この探索により有望な合金が見出された際には、薄膜化した素子を用いたセンサ特性の検討を行い、PdCo合金の結果と比較することでセンサに適した素子の合金組成を見出す。もう一点は、25年度において改善点として挙げた、応答速度の改善及び酸素存在下での挙動の解明を目指すことで、現時点での最適なセンサ素子を提案する。素子の形状(薄膜、ナノ粒子)の最適化により応答速度の改善を目指すと共に、利用環境によるセンシング特性の変化を理解することで、本センサが適応可能な環境を明らかにする。具体的には、形状に関しては当初27年度に予定していた合金のナノ粒子化に取り組み、ナノ粒子化したPdCo合金の磁気特性と水素吸収特性を調べる。利用環境に関しては、酸素雰囲気下での水素吸収特性、あるいは湿潤空気下でのセンシング特性等を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題に関する学会発表などの旅費や実験補助等への謝金が当初の想定を下回り、本年度は全く必要としなかった。また、構築した装置の物品費は既存のシステムを流用することで費用を抑えることができたが、一方で、消耗品が予想以上に多く必要となったため、結果として使用額がすべて物品費となった。 平成26年度は成果発表の機会を多く予定していることから、今年度に使用しなかった金額の多くを学会等への参加費及び出張旅費に充てる予定である。また、これまでの経験より本実験では今後物品費の増加が見込まれるため、人件費やその他の出費とバランスをとりながら利用していく予定である。
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Research Products
(2 results)