2014 Fiscal Year Research-status Report
水素吸蔵合金の耐久性向上を目指した水素吸蔵放出に伴う空孔形成回復メカニズムの解明
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25820361
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
榊 浩司 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (20392615)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水素吸蔵 / 相変態 / 空孔 / 陽電子消滅 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素吸蔵合金は水素を可逆的に吸蔵・放出できる性質を有するため、エネルギー貯蔵媒体として期待されている。定置用のエネルギー貯蔵媒体として考えた場合、繰り返し耐久性を向上させることが重要な課題となっている。これまでの実績で耐久性の悪いものほど格子欠陥の蓄積が多いこと、また、相変態をする際に格子欠陥が導入されやすいということを見出してきた。そこで、格子欠陥の蓄積を抑制する方法、言い換えれば耐久性を向上させる方法を見出すために、相変態と格子欠陥形成の関係を調べてきた。 今年度も昨年度に引き続き、各種新規材料の合成、結晶構造評価、水素吸蔵評価を行ってきた。今年度合成した試料は、現時点では室温で相変態するものはどのような温度域でも相変態するもの、室温で相変態をしないものはどのような温度域でも相変態しないものという2種類であった。もっとも興味深いと思っている合金は、低温では水素吸蔵反応時に相変態し、温度を上げることで相変態しなくなるような合金であるが、これについては来年度も引き続き探索を行う予定である。 放射光X線を用いた水素雰囲気下その場全散乱実験を計画していたが、マシンタイム中にセルの不具合もあり、水素吸蔵反応を観察することができなかった。その原因を追究し、セルのシール性に問題があると考え、改良を行った。次年度以降は新型セルを用いて実験を行う予定である。 実験室系のX線回折装置を用いて一部の合金について水素雰囲気下その場X線回折実験の解析を行った。以前相変態しなくても空孔形成が生じ始めた水素濃度領域を境にして、格子の膨張率の変化が見られた。このことは単純に相変態だけが格子欠陥形成に効いているのではなく、別のファクターも存在していることを示唆する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射光X線を用いた水素雰囲気下その場全散乱実験を計画していたが、マシンタイム中にセルの不具合もあり、水素吸蔵反応を観察することができなかった。そのため、計画していた内容にやや遅れが生じた。しかしながら、これまでの実験データの解析や各種材料の評価は順調に進んでいること、また、セルの改良も済み、かつ、短時間での測定装置の開発を別プロジェクトで成功していることから来年度取り戻せる範囲の遅れであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは主として、各種水素濃度で平衡に達した状態でのX線回折を行うことを計画していたが、別プロジェクトにおいて1秒という短時間での連続測定を可能とする装置を開発できたため、これを用いて測定時間の短縮を図り、これまでより高効率な測定を実施する予定である。また、すでに合成できている合金についてはX線回折の結果を待たずに陽電子消滅実験を並行して行う予定とする。
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Causes of Carryover |
今年度計画していたクラスターパソコンの購入をより汎用性の高い予算である運営費交付金で行った。そのため、予算の執行計画にずれが発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
陽電子用温度可変システムのハード面の購入はすでに済んでいるが、システムを完成させるためにはいくつか改良の必要性が発生している。繰り越している予算はそちらに充填する方向で検討を進めている。また、その場測定用の試料容器の数量の増加が必要となってきたので、繰越金はそちらでも使用する計画である。その他、次年度の計画自体は変更ない。
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