2015 Fiscal Year Annual Research Report
水素吸蔵合金の耐久性向上を目指した水素吸蔵放出に伴う空孔形成回復メカニズムの解明
Project/Area Number |
25820361
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
榊 浩司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創エネルギー研究部門, 主任研究員 (20392615)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水素吸蔵 / 相変態 / 空孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素吸蔵合金は水素を可逆的に吸蔵・放出できる性質を有するが、水素吸蔵に伴い格子欠陥が導入されるため、耐久性が悪くなる。本研究では、La(Ni,Cu)5+xの化学組成を変化させることで、格子ミスフィットの大きさ・有無、体積膨張量、ダンベルペアの濃度を変化させ、空孔形成・回復に及ぼす影響を調べた。化学組成のずれxを大きくすることで、水素吸蔵特性が変化し、LaNi5では平坦であったプラトー領域が大きく傾くだけでなく、固溶領域も拡大した。LaNi4.4Cu及びLaNi4.6Cuの水素吸蔵過程のその場観察放射光Ⅹ線全散乱実験の結果では、水素吸蔵過程で相変態が観察されなかった。一方、すべての試料に水素放出過程のⅩ線回折実験を行ったところ、組成ずれが小さな試料では明瞭な2相共存領域が存在し、LaNi4.4Cu及びLaNi4.6Cuのように組成ずれの大きな試料でも単相では説明のつかない回折パターンの変化が見られた。すなわち、吸蔵過程と放出過程で相変化挙動に差があることが示唆された。また、c軸方向に対する格子膨張量は化学組成のずれにあまり影響されなかったが、a軸方向は比較的抑制され、2相共存領域での2相の格子定数の差(格子ミスフィット)も小さくなることを確認した。水素吸蔵・放出後の試料の陽電子消滅実験を行った結果、すべての試料で格子欠陥形成に起因した陽電子寿命値の増加が見られた。しかしながら、LaNi4+xCu系およびLaNi3+xCu2系のどちらにおいても化学組成のずれの増加とともに陽電子寿命値の上昇が抑制される傾向にあった。すなわち、化学組成をずらしたことで、格子ミスフィットが減少し、形成される格子欠陥量が減少したこと、また、ダンベルペアの濃度が増えたことに伴い回復する格子欠陥量が増大したことを示唆する結果が得られた。
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