2013 Fiscal Year Research-status Report
熱エネルギーに代わる新規なスパッタ薄膜構造制御技術開発
Project/Area Number |
25820371
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
野口 大輔 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (00413881)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | スパッタリング法 / 薄膜構造制御 / ラジカル / 化学アニーリング効果 / 高速低温結晶化 / 光触媒 |
Research Abstract |
スパッタ成膜における薄膜構造制御を、熱エネルギーによる制御から基板選択性を考慮しない指針に基づいた新規な制御手法へ移行・開発することは重要である。本研究ではこの代替エネルギーとしてラジカルの化学アニーリング効果に着目し、スパッタ工程とラジカル照射工程を併用した併用式スパッタリング法を使って、高速低温成膜条件下におけるラジカルを用いた薄膜成長(特に結晶成長)メカニズムの解明を目的としている。本課題は材料としてTiO2光触媒を選択した場合のスパッタ薄膜構造とラジカルの化学アニーリング効果との関係を定量的に調査し、ラジカルの化学アニーリング効果に有効なスパッタ薄膜構造の確立とその制御因子の抽出を試みる。本年度では、併用式スパッタリング法の1つであるRAS (Radical Assisted Sputtering) 法を用いてスパッタ工程におけるスパッタ粒子の運動エネルギーとスパッタ薄膜構造の関係を定量的に解明した。具体的には、プロセスパラメータとして「投入電力」と「ガス圧力」を選択し、この運動エネルギーに大きな影響を与えるプラズマ中のイオン分率とプラズマ電位を変化させた。その後、Thompsonの式およびKevin-Meyerの式を用いて任意のプロセスパラメータに対するスパッタ粒子の運動エネルギーを算出し、その制御因子の抽出を行った。スパッタ粒子の運動エネルギーは約13.0~16.0eVの範囲で変化しており、全ガス圧力の増加に伴い減少し、投入電力の変化にはあまり影響を受けない。ターゲットから飛び出したスパッタ粒子は基板上に到達するまでに衝突散乱(scattering)を繰り返すが、スパッタ粒子の運動エネルギーはこのscattering現象に強い影響を受けており、scattering現象に影響を与えるプロセスパラメータを任意に設定することで運動エネルギーを制御できることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では熱エネルギーの代替エネルギーとしてラジカルの化学アニーリング効果に着目し、併用式スパッタリング法を利用して高速低温成膜条件下におけるラジカルを用いた薄膜成長(特に結晶成長)メカニズムの解明を目的としている。特に本年度では、スパッタ粒子の運動エネルギーをThompsonの式およびKevin-Meyerの式を用いて数値化し、その制御因子の抽出を行い、さらに、数原子層レベルで構成されたスパッタ薄膜構造のその場観察を行うことで運動エネルギーに対するスパッタ薄膜構造の変化を明らかにする予定であった。しかし、当初、購入を予定していた物品(走査プローブ顕微鏡ステーション)を購入することが出来なかったために、H25年度実施予定の研究項目の一部を実施することが出来ず、スパッタ粒子の運動エネルギーの算出とその制御因子の抽出のみ明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
スパッタ粒子の運動エネルギーを数値化し、その制御因子の抽出を明らかにした。今後、走査プローブ顕微鏡を用いて本成膜手法の1サイクル分に相当する数原子層レベルで構成されたスパッタ薄膜構造のその場観察(粒子径・分布・構造)による運動エネルギーに対する構造変化の検討を行う。さらに、スパッタ工程における数原子層レベルで構成されたスパッタ薄膜構造が、ラジカルの化学アニーリング効果によって構造変化していく様子を成長段階ごとに観察し、結晶性および機能性評価を行うことで、ラジカルの化学アニーリング効果に有効なスパッタ薄膜構造を決定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
仕様書作成等に関する研究担当者側としての事務作業は期限通りに進めることができたが、本校事務担当部署の購入手続きが遅れたため、当初予定していた物品を購入できなかった。 現時点(2014年5月)の段階で、H25年度に購入予定であった物品(走査プローブ顕微鏡ステーション)に関する事務手続き(入札手続き等)は進んでおり、H26年度の早い時期に物品が納入される予定である。物品が納入され次第、当初予定していた研究項目(本成膜手法の1サイクル分に相当する数原子層レベルで構成されたスパッタ薄膜構造のその場観察(粒子径・分布・構造)による運動エネルギーに対する構造変化の検討)を実施し、研究計画の遅れを取り戻す。
|