2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25820385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
原 伸生 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 研究員 (70613545)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気体分離膜 / 金属有機構造体 / 対向拡散法 / 多孔質物質 / 選択透過 / MOF |
Research Abstract |
新規な多孔性物質として注目される金属有機構造体(MOF)は、規則的な多孔構造を利用して分離膜への応用が期待される。本研究においては、新規に提案した液相対向拡散法を用いてMOF膜の開発を行った。本研究では、気体透過度の低減に向けたMOF層厚みの低減および本開発指針の一般化を行うこと、さらに液相対向拡散法によるMOF膜の作製における汎用性の高い開発指針を得ることを最終的な目的としている。 平成25年度においては、液相対向拡散法によるMOF膜の作製を他のMOF種であるZIF-8膜に応用して、本作製手法の一般化を行った。ZIF-8の細孔径はプロピレンとプロパンの分子径の中間に相当し、分子径の違いにもとづいてプロピレンとプロパンを分離することができる多孔性物質である。本研究において、多孔質αアルミナ中空管を用いて液相対向拡散法を用いてZIF-8膜の作製を行った結果、緻密な分離層を有するZIF-8膜の作製に成功した。単成分の気体透過特性においては、酸素より大きな分子径の気体分子の透過度が低下し、気体分子を分子径にもとづいて分離する分子ふるい効果を得ることに成功した。 さらに、気体透過度の向上を目的としてZIF-8層厚みの低減を行った。液相対向拡散法による膜作製においては、供給する反応物質の反応性と拡散性の比が大きく影響し、反応性比を高めることにより薄いZIF-8層を得られる。本研究においては、液相対向拡散法によるZIF-8膜作製時に溶液濃度と溶液濃度比の制御を行い、ZIF-8層の形成のメカニズムを明らかにした。これに基づいて、ZIF-8層厚みを80ミクロンから最小5ミクロンまで低減し、プロピレン透過度の約2倍の向上を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度においては、液相対向拡散法を用いて緻密な分離層を持つプロピレン/分離用のZIF-8膜の作製を行った。得られたZIF-8膜は、プロピレン/プロパン選択性55以上を示し、分子サイズに基づいた選択透過性が得られることを明らかにした。ZIF-8膜の分離特性の解析から、ZIF-8膜においてはプロピレンとプロパンの拡散性の違いにもとづいて分離が行われていることを明らかにした。これらの結果から、液相対向拡散法によるMOF膜の作製手法をZIF-8膜に適用して高い選択性を持つZIF-8膜の作製を行い、液相対向拡散法による作製手法の一般化に成功した。 さらに平成25年度においては、MOF膜の作製条件の検討を行った。液相対向拡散法をZIF-8膜の作製に適用する際に、溶液濃度と溶液濃度比の制御を行い、ZIF-8の分離層の構造制御を行った。液相対向拡散法においては、特に溶液濃度が高い条件において分離層を形成する反応領域が狭小化され、最終的に得られるZIF-8の分離層の厚みを薄くできることを明らかにした。これにより、ZIF-8の分離層の厚みを80ミクロンから最小5ミクロンまで低減し、薄層化によってプロピレン透過度の2倍の向上に成功した。 以上より、本年度において、金属・有機構造体を用いた機能性分離膜の開発は当初の計画に沿っておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、液相対向拡散法によるMOF膜の作製法の一般化を進め、気体選択透過性のさらなる向上を行う。平成25年度に得られた分離層厚みに低減に向けた知見に基づき、ZIF-8膜の気体選択透過性の向上に取り組む。具体的には厚さと細孔径の異なる多孔質基材を用いてZIF-8膜の作製を行い、多孔質基材の構造が分離層厚みと気体透過性に及ぼす影響を解析する。膜作製条件に加えて多孔質基材の構造が分離層の構造に与える影響を解明することで、ZIF-8膜の性能向上を目指す。さらに、プロピレンとプロパンを用いた混合ガス透過試験を行い、ZIF-8膜の膜構造と選択透過特性の関係を明らかにする。 さらに平成26年度には、液相対向拡散法によるMOF膜の作製法の一般化に向けて、他のMOF種としてZIF-7を用いた膜作製を行う。ZIF-7はZIF-8より細孔径が小さいことから、高い分子ふるい性の気体透過特性を示すことが期待される。前年度に得られた知見に基づき、多孔質基材内部において欠陥を低減した薄いZIF-7の分離層を形成する条件の探索を行い、高い気体選択透過性を持つZIF-7膜を開発する。 以上の取り組みより、液相対向拡散法によるMOF膜の作製における汎用性の高い開発指針を得ることを目標として、平成26年度の研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、気体透過度の測定に用いる測定ガスの購入費用を使用額として計上した。しかし、研究の実施状況に基づき当予算による測定ガスの購入を平成26年度に延期した。このため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、平成26年度において、当初の予定通り測定ガスの購入費用として使用予定である。
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Research Products
(10 results)