2013 Fiscal Year Research-status Report
非イオン性界面活性剤を用いた単分散ZIF-8の粒径制御と吸着分離への応用
Project/Area Number |
25820386
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中坂 佑太 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30629548)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 化学工学 / 材料合成 |
Research Abstract |
Zeolitic Imidazolate Frameworks(ZIF)は,金属イオンと有機リガンドが相互作用することで形成される金属有機構造体の一種である.本研究では,ZIFの一種であるZIF-8に対し非イオン性界面活性剤を用いた単分散なZIF-8結晶の合成と結晶サイズ制御,ZIF-8結晶内における低級炭化水素などの拡散機構解明,これら分子の吸着速度とZIF-8結晶径の関係を明らかにすることを目的としており,平成25年度はZIF-8合成における非イオン性界面活性剤添加の効果と粒径制御について検討した. 1)ZIF-8合成時に非イオン性界面活性剤を添加することで,ZIF-8のナノ結晶を得ることに成功した.また,非イオン性界面活性剤を添加しない場合に比べ得られるZIF-8結晶径は約1/20であった.なお,ZIF-8と同様の構造を有し骨格中に異なる金属種が存在するZIF-67の合成においても非イオン性界面活性剤の添加効果が得られることを確認した. 2)非イオン性界面活性剤の親水基鎖長および疎水基の分子構造の影響を検討した.界面活性剤の親水基鎖長を変化させることで,ZIF-8の粒径をコントロールすることに成功した.また,非イオン性界面活性剤の親・疎水性の指標として用いられるHLB値を用いてZIF-8粒子径の評価を行った所,非イオン性界面活性剤のHLB値が大きくなるほど(親水性が高くなるほど)ZIF-8粒径は小さくなることが明らかにした. 3)合成溶液中の界面活性剤濃度が得られるZIF-8粒子径に与える影響を検討した.界面活性剤濃度を高くすることで,合成されるZIF-8の粒子径は小さくなり約35nm程度の粒径のZIF-8合成に成功した. 4)ZIF-8の非イオン性界面活性剤添加合成における合成時間の影響を検討した.合成時間6時間以上では,粒径,結晶形態に変化は見られないことを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において平成25年度はZIF-8合成における非イオン性界面活性剤添加の効果と粒径制御を目的として,①添加する非イオン性界面活性剤中の疎水基の分子構造,②非イオン性界面活性剤の疎水基・親水基鎖長比,③合成溶液中の非イオン性界面活性剤濃度,④合成時間の影響を検討することを計画した. ①非イオン性界面活性剤の疎水基の分子構造によって得られるZIF-8粒径に大きな違いは見られなかった. ②親水基鎖長が異なる非イオン性界面活性剤を用い,ZIF-8の合成を実施し,非イオン性界面活性剤の親・疎水性の指標の一つであるHLB値と得られたZIF-8粒径の関係を明らかにした. ③合成溶液中の非イオン性界面活性剤濃度を変化させてZIF-8合成を実施し,非イオン性界面活性剤濃度が高くなるほど得られる結晶径が小さくなることを明らかにした. ④合成時間が6時間以上では、粒径、結晶形態に違いは見られないことを確認した. 以上より,当初の計画を達成できた.また,予備検討により合成温度を変化させることで非イオン性界面活性剤添加法による粒径制御範囲が広がることが示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
1)非イオン性界面活性剤を添加したZIF-8結晶合成 平成25年度の研究により,非イオン性界面活性剤の親・疎水基鎖長や界面活性剤濃度を制御することで粒径の異なるZIF-8結晶の合成に成功した.一方で,非イオン性界面活性剤添加に加え,合成温度が粒径制御に対し重要な要素となると考えられる.そこで,当初の計画に加えて,これまでの室温合成に加え合成温度を変化させてZIF-8の合成を実施する.さらに,非イオン性界面活性剤の効果を明確にするため,非イオン性界面活性剤の親水基と同等の分子構造を有するポリグリセリンを用いて合成を実施し,非イオン性界面活性剤を添加したZIF-8合成調製法を確立する. 2)ZIF-8結晶内拡散係数,吸着等温線の測定 ZIF-8の結晶細孔径は,二酸化炭素や低級炭化水素などの分子径に近い大きさを有することから,吸着剤や触媒としての利用を考える際,細孔内での物質移動現象解明は重要な要素となる.結晶内拡散係数を実験的に厳密に測定するため,粒径の均一なZIF-8を用い定容法により拡散係数・吸着等温線を測定し,拡散機構を検討する. 3)吸着速度と結晶径の関係 合成に成功している粒径の異なるZIF-8結晶を用い,固定層流通式の装置により二酸化炭素,低級炭化水素の吸着速度を破過曲線により測定する.また,吸着速度を結晶径の関係を2)で得られる拡散係数を用いて検討する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主要な研究計画である,非イオン性界面活性剤を用いた単分散ZIF-8の粒径制御,ZIF-8細孔内での低級炭化水素拡散機構解明および吸着分離への応用を遂行するためには,平成25年度中に非イオン性界面活性剤添加によるZIF-8の粒径制御を達成する必要があった.1)非イオン性界面活性剤構造,2)非イオン性界面活性剤濃度のコントロールによって室温でZIF-8結晶径を制御可能であることを見出した.ZIF-8粒径制御の検討において,研究がスムーズに進み,試薬等の使用量を抑制できたため,当初の計画より物品費を抑えることができた.また,国際会議への参加を予定していたが,研究に進展がみられ,研究に注力することとしたため次年度使用額が生じた. 平成25年度は室温において非イオン性界面活性剤を添加したZIF-8の粒径制御の検討を実施した.平成26年度では,ZIF-8結晶細孔内での低級炭化水素種の拡散機構解明,ZIF-8粒子への低級炭化水素種の吸着速度とZIF-8粒径の関係についての検討を計画しており,ガス試薬の購入および粒径の異なるZIF-8をまとまった量合成する必要があり,試薬類の購入が増加することが見込まれる.また,国際会議へ参加し吸着,拡散機構解明に関する情報収集を行うとともに,これまでに得られた成果を,国内学会にて発表することを計画している.昨年度の差額は,主に試薬購入費,ガス試料購入費,拡散係数測定および吸着速度測定実験の物品費に充てる計画である.
|