2013 Fiscal Year Research-status Report
テイラーフロー型気液固触媒反応器における周期変動効果の発現
Project/Area Number |
25820388
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堀江 孝史 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20513550)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 周期変動操作 / トリクルベット反応器 / 水素化反応 / 間欠供給 / 非定常状態 / 拡散律速 / 反応熱蓄積 / 充填層反応器 |
Research Abstract |
平成25年度は、α-メチルスチレン(AMS)の水素化によるクメン生成について固体触媒充填型の触媒層を利用し、周期変動操作の効果を検証した。本研究課題は、細管内の気液交互流(Taylor Flow)の利用によって変動効果を発現させることを最終的な目標としているが、一般的に用いられる充填層型反応器によって変動操作効果の要因を調べ、基礎的知見を獲得することを目的とした。 パラジウム担持アルミナ触媒(固体)をガラス製円筒型反応器に充填し、水素(気体)を流通させ、さらに、AMS(液体)を循環供給する気液固3相の反応装置(トリクルベット反応器)を製作した。一定流量でAMSを供給する定常操作の場合、固体表面に纏わりついたAMS液膜は一定の厚みを維持するため、水素が固体表面に到達しにくいと考えられる。また、反応熱はAMSの流通によって奪われてしまい、触媒層温度は外部加熱以外ではほとんど上昇しなかった。一方、液供給を間欠的に行う液供給周期変動操作では、非液供給時は触媒表面上の液膜が薄くなり、水素が触媒表面に到達しやすくなったと考えられる。また、触媒層温度の経時変化を調べたところ、温度上昇が2段階で起こり、最大で40℃から120℃まで上昇することが確認できた。結果として、AMS転化率は定常操作に比較して最大で5倍程度に大きく上昇した。しかし、定常操作においてAMS流量を減少させた際にも液の薄膜化によって反応促進が起こると予想されたが、変化はなかった。さらに、外部加熱によって触媒層温度を変化させてもAMS転化率は大きく変化しなかった。したがって、周期操作を行った際は、液の薄膜化(蒸発面の出現を含む)と反応熱の蓄積が複合的に起こることによって、反応成績の大幅な向上が得られる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書で当該年度は、Taylor Flow によるAMS水素化実験を行い、周期(気液スラグ長さの和)、スプリット(気相スラグ長さと液相スラグ長さの比)、流量の影響について調べることを計画の一部としていた。しかし、本反応系に対して一般的な充填層について周期変動操作を行ったところ、反応熱の効果や液膜の状態など重要な知見が得られたため、本年度は充填層を対象とした研究に重点を置いた。これにより、Taylor Flow反応器設計への指針が得られるとともに、当初予定していたTaylor Flowと充填層の結果の比較においても、条件設定が行いやすくなるという利点も生まれた。さらに、充填層における変動操作でも定常状態をはるかに超えるAMS転化率が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
アルミニウム基材に流路を作り、Taylor Flow反応器を製作する。当初は、アルミニウム管の内壁を陽極酸化によって多孔質アルミナにし、パラジウムを担持させる予定であったが、アルミニウム板に溝を掘ることで反応流路とする方が、上面のガラス板から内部の流動状態が確認できるようになるため、これを採用し、実行する予定である。陽極酸化およびパラジウム担持は溝に対してのみ行う。また、Taylor Flowの形成(流路内における気液交互流)条件について、無次元数のエトベス数によって整理できることから、これを設計に応用する。作製後は、Taylor Flow によるAMS水素化実験を行い、周期(気液スラグ長さの和)、スプリット(気相スラグ長さと液相スラグ長さの比)、流量の影響について調べる。その上で、充填層の結果と比較し、非定常操作による成績向上の要因について解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行するうえで、必要な物品および薬品を購入した端数として80円が残った。 次年度に計画されている実験装置および薬品等を購入するため、次年度分の助成金と合わせて使用する。
|