2014 Fiscal Year Research-status Report
乾燥ストレス耐性ペプチドを利用したタンパク質発現系の構築とその作用機構の解明
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25820405
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
池野 慎也 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 准教授 (20437792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質発現 / ペプチド / 大腸菌 / 共発現 / LEA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、組換えタンパク質の効率的な生産方法について、独自に開発したタンパク質の高効率発現系を開発・発展させることである。目的タンパク質を大腸菌に発現させる時に、乾燥ストレス耐性タンパク質をベースに設計したペプチド(LEAペプチド)を共発現させると、目的タンパク質の発現量が倍増することを研究代表者はこれまでに見出した。本手法は、目的タンパク質を高効率に発現させる手法として他にはない独特な技術である。本発現システムの実用化を念頭に、本年度は前年度までに作成したペプチドライブラリーを用いて、目的タンパク質の発現量をこれまで以上に亢進させる新規LEAペプチドを見出すことを目的としている。また、本技術の汎用性を確認するため、他の宿主用いた評価も行った。 これまでの研究成果として、タンパク質発現量増大の効果が得られたLEAペプチドは、その発現効率の増大が最大で2倍であった。実用化を図るうえで、発現効率の増大をこれまで以上にもたらす新規ペプチドを探索する必要性がある。LEAペプチドの配列で規則性が求められていない4番目と10番目のG配列に着目し、そこに変異を入れたペプチドライブラリーを前年度までに行い、本年度は、まず発現量の増大効果を与えるペプチドのスクリーニングを行った。設計したペプチドにおいて、GをSに変異させたペプチドを除いて、他の新規LEAペプチドを共発現させたときに目的タンパク質の発現量が増大した。とくにGをKやNに置換したLEAペプチドは今までに最も目的タンパク質の発現量を増大させていたペプチドを上回る効果が得られた。一方、他の宿主を用いた評価も実施した。コドンバイアスによる発現抑制を解消するために作成されたRosetta種を用いて評価した際も、同様にLEAペプチドによる発現量増大効果を確認した。他の宿主を用いた発現に関しても、現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、以下の3つの項目を解決すべき問題として取り上げ、それを研究目的として、推進している。 1. 実用化を推進するためのペプチド配列の至適化 2. 他の宿主を用いた発現系への応用展開 3. LEAペプチドの細胞内での作用機序の解明 2年目は、LEAペプチドの配列ルールに則った機能性ペプチドライブラリーからタンパク質発現効率増大を示す機能性ペプチド配列を探索し、配列の至適化を行うことが最大の目標である。その結果、研究実績の概要に示したように、これまでに得られたペプチドよりも発現量増大効果を有するペプチドのスクリーニングに成功した。他の宿主を用いた実験においては、評価対象が少ないものの、その汎用性を明らかにしつつある。LEAペプチドの細胞内での作用機序の解明に向けて、その取りかかりとしてペプチド発現量の制御による目的タンパク質の発現量増大への影響について検討を始め、足がかりとなるデータを収集している。以上のことから、最終年度の細胞内での作用機序の解明に向け、順調に研究が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたペプチド配列を分子シミュレーションソフトウェア:MOE(Molecular Operating Environment)を用いて、その構造およびタンパク質への結合予測を行う。得られたペプチドの構造パターンから、タンパク質への吸着部位および分散を促進する部位を見出し、本ペプチドによる発現量増大効果のメカニズム解明への足がかりとする。 抗体・酵素等のほ乳類由来の機能性タンパク質は、糖鎖修飾などの翻訳後修飾が必要であり、それらの工業的大量生産には大腸菌等の原核細胞を用いた発現系ではなく、一般的に真核細胞の発現系が多く用いられる。酵母によるタンパク質発現システムは、工業用酵素の生産で利用例が多く、適切な折りたたみ構造および糖修飾を要するタンパク質の生産に広く利用されている。当共発現システムを酵母細胞発現系へ応用し、その汎用性を確証する。 大腸菌の発現システムを利用した無細胞タンパク質発現系を用いて、目的タンパク質の発現量増大を検討する。無細胞発現系は、大腸菌のタンパク質合成に必須の因子だけからなる試験管内タンパク質合成手法を使用する。この因子にはシャペロンは含まれていない。この無細胞発現系の実験結果とLEAペプチド発現量の制御による細胞内での目的タンパク質の発現量評価および構造解析で得られたデータを相補的かつ相乗的に組み合わせることで、LEAペプチドが引き起こす現象を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
備品(培養装置)の購入費用が当初予定していた金額より安くあがったため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
設計する分子(ペプチド)数が予定よりも多くなる見込みがあるため、その分子の合成費用へ補填していく。
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Research Products
(9 results)