2013 Fiscal Year Research-status Report
原油回収技術の開発に向けたメタン発酵共生系の鍵微生物の獲得と分子機構の解明
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25820430
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中村 浩平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40456538)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メタン生成アーキア / 共生菌 / アルカン / メタン / 原油 / 未培養細菌 |
Research Abstract |
①アルカン分解菌の集積培養,分離とその性状解析 アルカン分解メタン発酵共生培養系(以降,共生培養系)から,アルカン分解に関与するとされるSyntrophaceae科の未培養細菌を試みた.既知Syntrophaceae科細菌が低級揮発性脂肪酸を利用することから,プロピオン酸,酪酸塩を基質に共生培養系を分離源として分離を試みた.その結果,プロピオン酸塩添加系では細菌の生育は確認できず,酪酸塩では確認できた.酪酸塩培養系で生育する細菌を分離培養したところ,標的としたSyntrophaceae科細菌でなくSyntrophomonadaceae科細菌であった.Syntrophomonadaceae科細菌もメタン菌と共生して脂肪酸を分解する共生菌で,アルカン分解メタン発酵共生培養系に存在する未培養Syntrophaceae科細菌はプロピオン酸や酪酸のような脂肪酸を利用しない可能性が考えられた. ②パイロシーケンサーによる優占アルカン分解菌の解析 アルカンを添加した培養系とアルカン非添加の培養系(共生培養系),さらに植菌源試料のパイロシーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子の解析を行った.その結果,アルカン添加培養系はアルカン非添加培養系とも植菌源試料ともその細菌組成が大きく変化していた.アルカン添加培養系では,Firmicutes門に属する未培養の細菌が組成の半分以上を占め優占化していた.このFirmicutes門未培養細菌はカナダの原油採掘関連環境からも検出されていた.一方Syntrophaceae科細菌はFirmicutes門未培養細菌に次ぐ優占種であった.Firmicutes門未培養細菌はその優占性からアルカン分解に関わる可能性が高く,我々の保有する共生培養系がアルカン分解共生菌の多様性とその新奇性を示す重要な試料であるといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の有する共生培養系内の未培養のSyntrophaceae科細菌の分離培養を試みたが,既知のSyntrophaceae科細菌が利用する基質を利用しなかった.これは未培養Syntrophaceae科細菌がアルカンのみを唯一の基質として生育する可能性が考えられ,新しい知見が得られた.アルカンを用いた継代培養による未培養Syntrophaceae科細菌の集積を行う. パイロシーケンシングの結果,Syntrophaceae科細菌が最優占種でなく未培養のFirmicutes門細菌が最優占種であった.これは予想しない結果であったが,本菌の優占性から本菌がアルカン分解共生菌であることが強く示唆され,アルカン分解共生菌の新しい知見ともいえる発見であった.このFirmicutes門未培養細菌には近縁となる細菌がいないためその機能や分離培養に関する情報が得られない.そこで次年度よりメタゲノム解析による本Firmicutes門未培養細菌の機能解明を試みる. メタン菌の低濃度水素利用能の生理学的因子の解析は,当初予定していた実験機器の導入が出来なかったため,遅れ気味である.本研究に汎用する機器(GC-TCD,GC-ESIMS等)の故障(TCD検出器の故障,ESIMS電子基板の故障)が相次ぎ,これらの修理復旧に予算を使わざるを得なかった.しかし,導入予定であった機器を用いずとも現在保有する機器を駆使して次年度から実験を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
【アルカン分解メタン発酵共生培養系のメタゲノム解析】 パイロシーケンシングに供したDNAの一部をメタゲノム解析に供する.DNAが十分でないため,メタゲノム解析としてはドラフト程度になると考えられる.しかし,最優占種のFirmicutes門未培養細菌に関する情報はある程度得られると期待される.その情報を基に本菌の機能や分離培養に関わる情報を取得する. 【アルカン分解メタン発酵共生培養系の継代培養および新規培養系の構築】 現在保持する培養系を継代培養し,アルカン分解共生菌の集積培養を図る.更にメタゲノム解析に供するために,新たに試料採取を行い大量に培養系を構築する.これによって,後のメタゲノム解析に高品質なDNAを供することが可能となり,メタゲノムデータの質の向上が期待できる. 【メタン菌の低濃度水素利用能の生理学的因子の解析】 先行研究でアルカン分解メタン発酵に関与すると考えられてきた好熱性水素資化性メタン菌を解析に用いる.メタン菌の細胞レベルでの速度論解析と熱力学的解析から,低濃度水素利用能の解明を試みる.菌株の休止細胞に水素を添加し各菌株の至適生育条件でバッチ培養する.水素濃度をGCを用いて経時的に測定し,プログレス曲線から速度パラメーターと,利用限界濃度からメタン発酵によるATP生産効率の指標となる最小自由エネルギー変化(⊿Gc)を算出する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に汎用する機器(GC-TCD,GC-ESIMS)の故障(TCD検出器の故障,ESIMS電子基板の故障)等が相次ぎ,これらの修理復旧に予算を使わざるを得なかった.その結果,当初導入予定だった機器の購入の金額に足りず,その導入を見送ったため次年度使用額が生じた. 次年度使用額を利用してメタゲノム解析の費用(50万円)と,試料採取の旅費(10万円),消耗品費(50万円)および国内学会(15万円),国際学会(International Union of Microbial Society Congress 2014)(40万円)での成果報告・情報収集に使用する.
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