2013 Fiscal Year Research-status Report
金属表面に塗布されたアルカリ金属層の表面分析の測定
Project/Area Number |
25820444
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
吉田 雅史 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 研究員 (80638825)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核融合 / 負イオン中性入射装置 / セシウム / プラズマ |
Research Abstract |
本研究は、メートル級大型負イオン源内にて使用するセシウムの添加量を最適化し、セシウムを有効利用するとともに、負イオンビームの一様性を向上させるために、イオン源でのソースプラズマ中のセシウムの振る舞いを実験的に明らかにすることである。本年度では、まず負イオン源内のセシウムの挙動を定性的に明らかにするためにセシウムの発光強度を分光法にて計測した。また、プラズマ電極(モリブデン製)表面のセシウムの定量評価のためのXPS用のコレクタープローブを設計し、電極上に設置した。 本試験で使用したJT-60負イオン源では、セシウムはイオン源上部中央からイオン源内壁に向かって添加されている。ここで負イオンはセシウムが塗布されたプラズマ電極上で生成される。そこで、ソースプラズマ中のセシウムの発光強度を、プラズマの中心を計測する視線およびプラズマ電極表面上を計測する視線に分けた。セシウム添加初期のイオン源内のセシウムの発光強度は、ソースプラズマを表す水素原子の発光強度の高い領域から増加した。セシウムを数グラム(~4 g)添加後、セシウムの発光強度分布は定常となった。このときのセシウムの発光強度分布は水素原子の発光強度分布と類似していた。またプラズマ電極表面上でのセシウムの発光強度が増加した領域から、負イオン電流値が増加し始めた。このことより、セシウムはイオン源内をソースプラズマによって輸送され、プラズマ電極に到達することが分かった。メートル級の大型負イオン源で、セシウムがどのように輸送されるかを定性的に初めて明らかにした。この結果は、セシウムの輸送にはソースプラズマが不可欠だけでなく、一様に負イオンを生成するには、セシウムの輸送を担うソースプラズマを一様に生成する必要があることを示唆している。 さらに、プラズマ電極上のセシウムの定量評価のためのコレクタープローブを数か所設置した。現在試験を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、メートル級大型負イオン源内にて使用するのセシウム添加量を最適化するために、イオン源でのソースプラズマ中のセシウムの振る舞いを実験的に明らかにすることである。本年度の成果により、セシウムの挙動を定性的に明らかにすることができた。これにより、セシウムがプラズマ電極上でどのような分布で堆積しているかを予測することができる見通しを得た。プラズマ電極上のセシウム定量評価のためのコレクタープローブもプラズマ電極に取り付けられたので、電極上のセシウム量を評価する準備もできた。また、漏えい量評価のために、プラズマ電極の下流側に新たにセシウムの発光強度を計測するための光ファイバを設置した。これにより、イオン源からのセシウムの漏えい量の評価も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
コレクタープローブで採取したセシウム膜をXPSにて定量評価も行う。プラズマ電極上の各所に設置されたコレクタープローブも同様に測定することで電極上のセシウム滞留量を算出する。他方、セシウムはイオン源内壁面に多く堆積することがこれまでの試験でわかっている。そこで、この内壁へのセシウム堆積分布を測定する。手法としては、イオン源を外側から局所的に追加熱を行い、その場所の壁温度を一時的に上昇させる。セシウムの融点は28.4度と低く、壁温度が上がることで堆積していたセシウムが蒸気となる。このときのセシウムの発光強度を分光法にて計測する。セシウムの発光強度は堆積量にほぼ比例しているため、これをイオン源内各所で行うことで、イオン源内のセシウムの発光強度分布、すなわちセシウムの堆積分布を取得することができる。ここで得られたセシウムの堆積分布に、別途得られるソースプラズマの空間分布およびプラズマ放電中の壁温度等を加味することでイオン源内のセシウムの挙動をより詳細に理解するとともに、イオン源内でのセシウム滞留原因を明らかにすることが可能となる。さらに、この知見にプラズマ電極上の滞留量、およびプラズマ電極下流に設置した分光法によるセシウム発光強度から、セシウムのイオン源内でのマスバランスを評価することで、これまで多量に添加していたセシウム量を抑制するだけでなく、本来負イオン生成に関与しないプラズマ電極上以外の場所に堆積したセシウムの有効利用方法も模索可能である。今回得られた知見に基づいて、メートル級のイオン源から一様性の高い負イオンビームを安定に生成することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当次年度使用額が生じた理由は2点である。ひとつは本年度ではイオン源内のセシウム挙動把握に必要な分光計測のための物品を購入したことにより、当初予定よりも購入費を抑えたため、もうひとつは海外での発表を控えたためである。 次年度では、今年度得られた結果を踏まえて、イオン源内壁のセシウム堆積分布を測定するための設備費として使用する。具体的には、イオン源を局所的に追加熱するためのヒータおよび熱電対一式である。イオン源は真空容器内に設置しており、アクセスにくいと同時にメートル級の大きさである。そのため、広範囲を一度に設置する必要があり多くのヒータおよび熱電対を必要とする。なお、研究成果を機構外へ向けて公表する経費にも使用する予定である。
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