2013 Fiscal Year Research-status Report
広範なエネルギーのあらゆる粒子に対応したはじき出し損傷モデルのための実験的研究
Project/Area Number |
25820450
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
岩元 洋介 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (10391327)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 極低温照射 / 高エネルギー陽子 / はじき出し断面積 |
Research Abstract |
本研究は、粒子輸送計算コードPHITSの金属材料の照射損傷計算手法の検証を行うために、測定データが全くない20-1000MeVの高エネルギー陽子照射による金属のはじき出し断面積を測定することを目的としている。 はじき出し断面積の実験値は、照射欠陥に伴う金属材料の電気抵抗の増加と粒子フルエンスから求まる。その際、試料を10K以下の極低温の状態にし、照射欠陥の微小な熱運動を止める必要がある。さらに、様々な加速器施設でデータ収集を行うために、コンパクトな極低温照射装置を開発する必要がある。 初年度は、極低温照射装置とデータ収集システムを開発した。冷凍機には取扱が簡便な小型GM冷凍機を採用した。照射中の試料を熱伝導により冷却するために、冷凍機の先端(4K第2ステージ)に熱伝導率に優れたアンカー(無酸素銅とアルミニウム棒)を接続し、さらにその先端は試料を埋め込む構造とした。試料として、純度99.9%、長さ3mm、厚さ0.2μmの銅を熱伝導率・電気的絶縁性に優れた窒化アルミ板へスパッタリングにより蒸着し、銅と窒化アルミ板の間の熱接触の向上に努めた。耐放射線性に優れ、極低温で校正されたセルノックス温度計を窒化アルミ基板上に固定した。電気抵抗測定法として、4端子法を採用した。製作した極低温冷却装置を、真空照射チェンバーに上部から挿入し、装置先端がビーム中心の位置になるようにした。装置の冷却試験を実施したところ、2時間で試料を7.4Kまで冷却することに成功した。 京都大学原子炉実験所 FFAG加速器施設のビームラインにおいて、125MeV, 1nAの陽子を試料に照射した。その結果、照射中に温度8K以下を達成し、かつ3.7Ω程度の銅の抵抗に対し±10μΩの高精度な測定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった小型冷凍機を用いた電気抵抗測定装置の製作と性能試験を達成するとともに、次年度に予定していた照射試験も実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の装置開発の問題点として、①粒子フルエンスの測定手法の未確立、②スパッタリングによる金属材料の形状の不確かさがあげられる。①については、照射チェンバー内の試料近傍に小型のビーム電流測定用ファラデーカップの設置、放射化法による測定の検討を実施する。②については、今回形状を正確に測定できなかったため、形状や材料特性が明らかなバルク状の金属材料に変更することを考える。平成26年度は、①及び②の問題を解決し、さらに精度良いはじき出し断面積を得る手法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時に購入を計画していた小型GM冷凍機を京都大学から借用できたために、次年度使用額が生じた。 京大炉FFAG加速器施設における照射試験の旅費・滞在費及び金属試料の追加購入に使用する。
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Research Products
(1 results)