2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25820452
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
千葉 敦也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 高崎量子応用研究所 放射線高度利用施設部, 研究員 (40370431)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クラスターイオン / 近接効果 / 分子固体衝突 / C60 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子やクラスターと固体との衝突における物理過程の理解は、原子分子物理から原始星の形成や生命の起源に至るまで様々な研究分野において基礎となる。クラスター衝突で発現する近接効果は、重要な物理過程であるが、その機構の理解には至っていない。本研究では、クラスターの構造や配向角(ビーム軸と分子軸のなす角)による近接効果への影響を明らかにすることを目的とする。 平成26年度までに、Heガスターゲットを通過した際、Heとの衝突で解離するC2イオンの解離核間距離が、薄膜誘起解離のものに比べ1Å以上増大することを示す実験結果を得た。これは、励起による核間距離の増大であり、固体原子との相互作用においては近接効果に影響すると考えられる。また、Arガスターゲットを通過したC2イオンの配向角分布を測定したところ、ガスターゲットが無い場合よりも配向角の平均値が小さくなることが確認された。C2の解離断面積が配向角に依存することを示す結果であると考えられる。しかしながら、構成原子数が少ないC2イオンでは、近接効果の指標となる薄膜透過後の平均電荷には、Arガスの有無で有意な差は認められなかった。衝突解離前の核間距離と近接効果の関係を得るにはC60などの構成数の多いクラスターが有利であると考えられた。しかし、実験を行うには、強度が極めて少ないMeV級C60ビームの増強が必要となった。そこで、C60ビームの高強度化に関する技術開発を行い、既存イオン源を用いた新たな負イオン生成法を考案し、従来の1,000倍のビーム強度を得ることに成功した。現在までに、配向性の高いC2ビームの形成の可能性を示す結果は得られたが、近接効果との関係を明らかにするには実験による更なる検証が必要である。今後はC60ビームを用い、近接効果に対する核間距離の影響に関しても引き続き研究を行う予定である。
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[Presentation] クラスターイオンの生成と加速2015
Author(s)
千葉敦也、山田圭介、薄井絢、鳴海一雅、斎藤勇一
Organizer
第52回アイソトープ放射線研究発表会
Place of Presentation
東大弥生講堂(東京都文京区)
Year and Date
2015-07-08 – 2015-07-10
Invited
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