2013 Fiscal Year Research-status Report
眼球運動中の視空間の知覚を安定的に維持する脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
25830009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲場 直子 京都大学, 学際融合教育研究推進センター, 助教 (20432370)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サッケード / 運動知覚 / 視覚ニューロン / 受容野 / MT野 / MST野 |
Research Abstract |
[目的] 本研究では、大脳後部頭頂葉MT(middle temporal)野およびMST(medial superior temporal)野を始めとするサルの高次視覚処理にかかわる領域からニューロン活動を記録し、『眼球運動中の視覚環境はどのようにコードされているか:すなわち個々のニューロン受容野が眼球運動中にどのように変化するのか』を明らかにする。 [成果] マカクサル2頭について、サッケード眼球運動課題のトレーニングを行い、これらのサルの大脳高次視覚野MT/MST野からニューロン活動を記録した。大脳高次視覚野のニューロンには受容野があり、それぞれが異なる網膜部位に映る視覚像に反応することが知られているので、眼球運動によって網膜上での視覚像の位置移動が誘発されるとき、対応する視覚ニューロンの受容野の位置および大きさにどのような変化が生じるのかを調べた。その結果、MTニューロンでは、受容野の位置が単に眼の動きに伴って受動的に変化するのに対し、MST野では、眼球運動が起こる前の刺激位置の記憶痕跡を反映した活動を示すニューロンが多く存在することを示すデータが得られた。また、MST野でみられる記憶痕跡に対する反応の潜時は、受容野内に呈示された刺激に対する反応潜時よりも短いことが明らかとなった。これらの結果により、MST野の活動が、サッケード前後に生じる視覚像のブレにかかわらず、安定した、かつ、連続した視覚認知を維持する神経メカニズムに関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、サルの大脳高次視覚野MT/MST 野から神経活動を記録し、ニューロン受容野に呈示した視覚刺激に対する応答が、眼の動きに伴ってどのように変化するかを調べる計画であった。現在までのところ、MT野とMST野のニューロン間でサッケード眼球運動の直前に呈示された刺激に対する反応特性が異なり、MST野には、眼球運動が起こる前の刺激位置の記憶痕跡を反映した活動を示すニューロンが多く存在することが明らかとなった。この成果については、2013年度の日本神経科学学会および北米神経科学学会で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、データ数を増やすとともに、眼球運動開始前から終了後に渡って、ニューロン受容野に変化が生じるタイミングを詳細に調べる。またマルチ電極を用いて複数のニューロン活動およびローカルフィールドポテンシャル(LFP)を同時に記録する。かつ、遠心性コピーの源と考えられる領野への微少薬物注入による局所不活化実験も並行してに行い、遠心性コピーがMST 野のどの層に入力するか、また皮質カラム内でどのような情報処理が行われて出力されるかを検討することで、神経細胞集団の機能的な相互作用を中心に検討を進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マルチ電極を用いた複数のニューロン活動およびローカルフィールドポテンシャル(LFP)の同時記録を行う。また、遠心性コピーの源と考えられる領野への微少薬物注入による局所不活化実験も並行してに行い、遠心性コピーがMST 野のどの層に入力するか、また皮質カラム内でどのような情報処理が行われて出力されるかを検討する。 神経活動記録用マルチ電極および薬理学実験用の電動マイクロインジェクタ等の購入に充てる。
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