2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25830018
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
堀 沙耶香 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20470122)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経発生 / 神経行動学 |
Outline of Annual Research Achievements |
侵害刺激からの逃避は生物間で保存される基本行動の1つである。生命維持に重要ゆえに、複数の独立した神経回路が存在し、損傷時には補償し合う安全機構が働く。しかし、逃避回路の細胞レベルでの発生の分子機序や、補償回路の構築機序は不明だった。 本研究では、補償回路の構築機序の「プロトタイプ(原型)基盤」の解明を目指し、シンプルなモデル生物である線虫 C. elegans を用い、逃避行動を規定する神経回路発生の分子機序の解析を行ってきた。これまでに、補償回路の中心的な介在神経(AIB 神経)の分化に、転写因子 lin-32 (ショウジョウバエ atonal、ヒト ATOH1 ホモログ)が必須であることを報告してきた。 当該年度は、lin-32 が AIB 神経でのギャップジャンクション構成因子(inx-1) の発現に必須であることと、inx-1 が正常な逃避行動発揮に必要であることを示した。次に、AIB 神経の分化異常が逃避回路に及ぼす影響を知る目的で、lin-32 変異体の分化異常をきたしたAIB 神経と、その直下の運動神経(RIM 神経)の侵害刺激に対する神経応答をカルシウムイメージング法により解析した。その結果、予想に反してAIB 神経は正常な応答を示したが、RIM 神経は反応遅延が観察された。先行研究により、RIM 神経は首の筋に投射していることと、後退行動を促進することが知られている(Gordus A., et al., Cell, 2015, 161, 1-14)。この結果は、RIM 神経の反応遅延によって、侵害刺激接触後の首の筋の収縮タイミングがずれ、効果的な後退行動(逃避)が生じなかったものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度以降の計画は、4、逃避行動における下流機能分子の同定と、5、fax-1、lin-32の逃避回路における神経機能の解析(カルシウムイメージング法)であるが、研究実績の概要で述べた通り、既に達成できた。平成27年度は、さらに発展的な研究を計画している。以上より、自己点検評価を「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降の計画については、研究実績の概要で述べた通り、既に達成できた。平成27年度、およびそれ以降の研究の推進方策は、以下の通りである。 1、RIM 神経が投射する首の筋のカルシウムイメージング法を行う。RIM 神経の遅れが、首の筋の収縮にどのように影響するか(タイミングのずれか、ピークの低下か、等)を解析する。 2、RIM 神経の反応遅延が逃避行動に及ぼす作用の解析を行う。具体的には、lin-32 変異体の逃避行動異常を詳細に解析し、開始時間に遅れがあるか、軽い逃避(方向転換や迂回)と強い逃避(Uターン)のどちらが低下しているのかを解析する。さらに、野生株で RIM 神経の反応遅延を誘発した場合、lin-32 変異体の行動表現型が再現できるかを解析する。
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Causes of Carryover |
2014年5月7日に出産し、産前産後休暇を取得した。また、妊娠、出産、育児のため、参加を希望していた国際学会2件(Cold Spring Harbor Asia Neurobiology meeting、C. elegans Development Topic Meeting/Asia-Pacific Meeting)、国内学会2件(神経科学学会、分子生物学会)での発表を取りやめた。そのため、その間の研究費と学会参加費分が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の予算と合わせ、実体顕微鏡を購入したい。 当初から研究室の人員に対して顕微鏡数が足りなかったが、これまでは技術員の帰宅後(夜間)に顕微鏡実験を行うことで対処してきた。しかし、出産、育児により、夜間の実験が困難になったため、専用の顕微鏡を購入することで研究の進展を測りたい。
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Research Products
(1 results)