2014 Fiscal Year Research-status Report
パラノーダルジャンクションによる神経軸索機能調節機構の解明
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25830019
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
石橋 智子 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (50453808)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミエリン / 軸索 / IP3R1 / パラノーダルジャンクション / 小脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミエリンが軸索の機能調節に積極的に貢献している可能性を考え、特に軸索とミエリンが直接結合するパラノード部位が、軸索機能調節にどのように重要であるのか明らかにするために研究を行っている。主要ミエリン糖脂質の一つであるスルファチドが欠損しているcerebroside sulfotransferase (CST)欠損マウスはパラノード形成異常を呈する。このマウスを使用し、平成26年度は以下のことを明らかにした。1.CST欠損マウス小脳プルキンエ細胞軸索に多数の腫脹が認められ、この軸索の膨らみは週齢を経るに伴い数が増加し、個々の腫脹も大きくなること。2.幼弱期の軸索変化は単純なaxoplasmのみの腫脹であるが、次第にミトコンドリアなど軸索内小器官やニューロフィラメント等骨格タンパク質が集積すること。3.軸索腫脹の最も初期の変化としてIP3誘導性カルシウムチャネルであるIP3R1が腫脹部に集積すること。そして、4.軸索腫脹はつねにミエリンに覆われているインターノード部分に認められることを明らかにし、論文に投稿した(JNR 93:19-27,2015)。これらの結果は軸索内カルシウム恒常性にミエリンが関与している可能性を示唆するものである。IP3R1は小胞体(ER)に局在するカルシウムチャネルである。ミエリンの存在が軸索内IP3R1の局在に影響をおよぼしているのか、あるいはERの分布に関与しているのか今後明らかにして行く必要がある。CST欠損マウスは生後6週齢頃から四肢の対麻痺など神経症状が認められるが、上記の結果から神経症状が現れるより前の早い段階で、パラノード形成不全による軸索の変化が生じていることが明らかとなった。軸索とミエリンが直接接しているパラノードの構造は、正常な軸索機能維持に極めて重要であることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は小脳のプルキンエ細胞軸索の変化を詳細に解析し、論文を一報投稿することが出来た。しかしながら、in vitroで薬理実験を行うため小脳スライスを用いた実験を計画し実行したが、スライス作成時に軸索のアーチファクトが生じてしまうためスライス培養法は不適切であることが分かった。小脳スライス培養法はミエリン形成もパラノード形成も容易に観察できたため、良い系であると考えていたが軸索腫脹のような人口産物が生じてしまい、薬理実験を行っても結果を判定できないと判断した。したがって、別の系を考慮する必要があり平成27年度は小脳プルキンエ細胞の分散培養を用いて検討して行く予定である。 またパラノード形成不全マウスの、末梢神経軸索の微細構造の変化も電子顕微鏡で観察し新たな知見を得ることができ、軸索内小胞体の形態とミエリンの関係性について今後詳細に調べて行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
軸索周囲にミエリンが巻かれパラノーダルジャンクションが形成されることにより、軸索上のIP3R1の局在がどのように変化するのか明らかにする。具体的には発達期正常マウス小脳プルキンエ細胞軸索上のIP3R1の局在を免疫電子顕微鏡により詳細に調べることにより、ミエリン形成に伴う軸索IP3R1の局在変化を明らかにする。免疫電子顕微鏡の条件を決定後、CST欠損マウス小脳でも同様に実験を行う。IP3R1はERに存在するカルシウムチャネルであり数多くの研究がなされているタンパク質であるが、神経軸索内のIP3R1がどのように発現制御され、移動しているのか、軸索内ERの分布がどのように決定されるのかこれまでほとんど明らかにされていない。したがって、小胞体の分布も電子顕微鏡で詳細に観察し、ミエリン形成と軸索ERの分布にどのような関係があるのか調べる。 CST欠損マウス小脳の軸索腫脹の変化の最も初期の所見として、腫脹部へのIP3R1集積があることを昨年見出している。すなわちIP3R1の限局的な過剰発現が腫脹という変化を引き起こしている可能性が考えられる。そこで、今年度はパラノード形成不全マウスであるCST欠損ヘテロ接合体マウスとIP3R1欠損ヘテロ接合体マウスを交配することによりCST/IP3R1ダブル欠損マウスを作製し、プルキンエ細胞軸索の変化を調べる。このことによりパラノード形成不全における軸索腫脹の原因が、IP3R1を介したカルシウム調節機構が関与しているのか推測することが可能であると考える。現在CST+/-/IP3R1+/-マウスを数匹生まれている状況であるので、引き続き交配を行い得られたダブル欠損マウスの解析をおこなう。
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Research Products
(3 results)